
あたしが蹴とばした石っころが、ころころヨウちゃんの足元まで、坂をのぼっていった。
「ふ~ん。そうやって、ヨウちゃん、自分が言ったことを、なかったことにする気なんだ~。サイッテー。
このごろリンちゃんたちとも、たくさん話してるみたいだしね。どうせ今に、リンちゃんたちにも、『オレがいる』とか『おまえだけだ』とか、都合のいいこと、言いはじめるんでしょ~?」
「……おまえな。オレが、倉橋たちと話してんのは、おまえが前に、『女子たちのことを、なんも知ろうとしてない』って、説教したからだぞ。
倉橋に告白されて。倉橋が、オレのことをちゃんと見てたんだって、知って。オレなりに、すごく反省したんだ。で、人のことを知ろうとしてんだよ。だから、表面ばっか、ヘンにカッコつけてねぇで、誠たちとも、前みたいに遊ぶようにしたんじゃねぇか」
……そうだったんだ……。
「って、じゃ、じゃあ、あたしは、どうなるのよっ!? あたしのことは、ほっといてもいいわけっ!? あたしがどういう人間かわかったから、もうあきたの? って、これがポイ捨てっ!? あ、有香ちゃんの言うとおり、この人、わっるい人間なんだ~っ!! 」
思いっきり、指さしたら「おまえはっ!」って、その指をつかまれた。
「とにかく、家来い! かあさんが、シフォンケーキつくって待ってんだろ?」
なにこれ?
指だけつかまれて、あたし、坂の上に連行されてく。
ぎゅっとつかまれた右の人差し指が、じんじん熱い。
「……ポイ捨てなんかする気ねぇよ。ただ、どういう顔して、綾を見たらいいかわかんなくて、ずっと、話しかけられなかっただけだ……」
ヨウちゃんの耳、赤い。
「……ねぇ。あたし、これからも、ヨウちゃんの家に行っていい?」
「……ああ」
「学校で話しかけてもいい?」
「……ああ」
……「好き」って言ってもいい……?
◆ ◆ ◆
妖精さん。
妖精さん。
妖精の世界で楽しく暮らしてますか?
あたしは、人間として、この町で生きていきます。
――「ナイショの妖精さん 1」 完――
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