《5》 真夜中のダンスパーティー18 - ナイショの妖精さん1
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《5》 真夜中のダンスパーティー18

  16, 2018 21:55
20181215



 あたしが蹴とばした石っころが、ころころヨウちゃんの足元まで、坂をのぼっていった。


「ふ~ん。そうやって、ヨウちゃん、自分が言ったことを、なかったことにする気なんだ~。サイッテー。

このごろリンちゃんたちとも、たくさん話してるみたいだしね。どうせ今に、リンちゃんたちにも、『オレがいる』とか『おまえだけだ』とか、都合のいいこと、言いはじめるんでしょ~?」


「……おまえな。オレが、倉橋たちと話してんのは、おまえが前に、『女子たちのことを、なんも知ろうとしてない』って、説教したからだぞ。

倉橋に告白されて。倉橋が、オレのことをちゃんと見てたんだって、知って。オレなりに、すごく反省したんだ。で、人のことを知ろうとしてんだよ。だから、表面ばっか、ヘンにカッコつけてねぇで、誠たちとも、前みたいに遊ぶようにしたんじゃねぇか」


 ……そうだったんだ……。


「って、じゃ、じゃあ、あたしは、どうなるのよっ!?  あたしのことは、ほっといてもいいわけっ!?  あたしがどういう人間かわかったから、もうあきたの? って、これがポイ捨てっ!?  あ、有香ちゃんの言うとおり、この人、わっるい人間なんだ~っ!! 」


 思いっきり、指さしたら「おまえはっ!」って、その指をつかまれた。


「とにかく、家来い! かあさんが、シフォンケーキつくって待ってんだろ?」


 なにこれ?


 指だけつかまれて、あたし、坂の上に連行されてく。

 ぎゅっとつかまれた右の人差し指が、じんじん熱い。


「……ポイ捨てなんかする気ねぇよ。ただ、どういう顔して、綾を見たらいいかわかんなくて、ずっと、話しかけられなかっただけだ……」


 ヨウちゃんの耳、赤い。


「……ねぇ。あたし、これからも、ヨウちゃんの家に行っていい?」


「……ああ」


「学校で話しかけてもいい?」


「……ああ」








 ……「好き」って言ってもいい……?







◆   ◆   ◆





 妖精さん。

 妖精さん。


 妖精の世界で楽しく暮らしてますか?

 あたしは、人間として、この町で生きていきます。

















――「ナイショの妖精さん 1」 完――



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