《5》 真夜中のダンスパーティー15 - ナイショの妖精さん1
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《5》 真夜中のダンスパーティー15

  13, 2018 22:08
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 右手の甲だって、左足だって、ほっぺただって。薬を塗っただけで、するりするりと治っていく。

 寝たきりだったヨウちゃんはもう起きあがって、ベッドの横に足を出して、腰かけている。


「ねえ、もう、これで傷はぜんぶ?」

「あとは、背中と肩だな」

「パジャマ、ジャマ。ぬいで」

「って、おまえは、ヘンタイかっ!? あとは自分で塗るからいいっ!」


 バッと、薬ビンを奪いとられる。


 なによ~。これじゃあ、さっきまでのほうが、おとなしくてかわいかったよ~。


「~っ」


 肩の筋肉をつかった自分が悪いのに。ヨウちゃん、右肩をおさえてうずくまってる。


「ほら、貸して。肩の、どこ?」


 指に薬をつけて、すーってなでたら、肩の傷も、すーって溶けて消えた。

 背中の傷も、虹色の光に消えていく。


 もうだいじょうぶ。
 これでいつもの元気なヨウちゃん。


 鼻の奥がつんとした。

「あっ」と思ったときには、遅い。ボロボロ、ボロボロ。あたしの目から涙がこぼれ出す。


 ヤダっ! サイアク。とまんない。


「ありがとな。綾」


 パジャマを着直してたヨウちゃんが、ふんわり笑ってふり返った。


「だ、ダメっ! こっち、見ないで~っ!」


 だって、めちゃくちゃはずかしい。

 あたしひとりで泣いちゃって、バカみたい。両手の甲で顔をふいてんのに、また目から涙があふれてくるし。


 うわ~ん! だって、うれしくて~っ!!


 ふっと目の前が暗くなった。と思ったら、あたしの体は、硬くて大きな胸の中にあった。



 ……え?


 太いヨウちゃんの両腕が、なんでかあたしの背中にまわってる。あたしの肩と腰を、右手と左手でぎゅってつかまれてる。ヨウちゃんのほっぺたが、あたしのほっぺたのすぐ上にある。


 え? え? え?


 なに? なにが、いったい、どうなってんのっ!?


 ドクドク、ドクドク。ドクドク、ドクドク。


 これって、どっちの心臓の音っ!?


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