《5》 真夜中のダンスパーティー14 - ナイショの妖精さん1
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《5》 真夜中のダンスパーティー14

  12, 2018 20:44
2018112401



「お願い。二階の手前の部屋だから」

「は、ハイっ!」


 ビンをにぎって、バタバタ階段を二階にのぼっていって。手前の部屋。

 ドキドキしながら、ドアノブをつかんで引いたら、ヨウちゃんの部屋の窓の外も、白んでいた。

 部屋の広さは、となりのお母さんの部屋とおんなじくらい? あたしの部屋よりは、ほんの少し、せまいかな?


 男の子の部屋って、こんなんなんだ……。


 ぬいぐるみとかキャラクターグッズとか、そういうカワイイ物がひとつもない。たなはメッキのラック。色も青とか黒とかメッキばっかりで冷めた感じ。

 だけど、生活感はばっちり。勉強つくえの上は、マンガとか教科書とかゲームの攻略本でごっちゃりだし。テレビラックの下は、雑誌とかDVDとかゲーム機とかがつみかさなってる。

 これ見たら、女子たち、がっかりするんじゃない?

 だって、マンガの中の男の子って、たいていでっかい部屋を持ってて、オシャレな家具が数個置いてあって、あとはひろびろ~。すっきり清潔~。観葉植物、ポンって感じなのに。

 どうでもいいところばっかり見ちゃうのは、窓の下のベッドで、すーすー寝ているヨウちゃんを、どうしたらいいかわかんないから。


 やっぱ、お母さんがヒマになるまで、お店で待とうかな……。


 そっとドアを閉じようとしたら、「……綾?」って呼ばれた。


 ぎゃっ! 起きたっ !!


「……あ、あの……ヨウちゃん、薬できたよ……」


「……マジで? すげぇ……」


 言葉は返してくれるんだけど、ヨウちゃん、ちっとも動かない。


 もしかしてあたし、寝言と会話してる……?


 そろそろと近づいていって、ヨウちゃんの目の前にビンを持っていったら、ヨウちゃんは、目を半分だけ開けて、「ホントだ……」って口元で笑った。


 あ……胸、キュンって鳴った。


「あ、あの……手、出して。あたし、傷口に塗る」

「……お願い」


 左腕がごそごそと、ふとんから出てくる。パジャマのそでをめくったら、あっちこっちにガーゼが貼ってあって、そこから血がにじみだしていた。


 うわ~ん、怖いよ~! あたし、スプラッター映画って苦手~っ!!


 顔をそむけて、なるべく見ないようにしながらガーゼをはがしたら、かみそりで切ったみたいな傷口。


 痛そう~! まだ血が出てる~!


 ビンのキャップを開けて、指に虹色の薬をつけて、ぶるぶる震えながら、塗りつける。


 どうしよう。どうしよう。これで、傷が治らなかったらどうしよう……。


 薬を塗ったところに、ぽっと虹色の光が灯った。


 薬は光を放ちながら、傷口にしみこんでいく。

 傷口に吸い込まれて光が消える。

 同時に傷も消えていた。

 傷があったところは、うすく赤い線がのこっているだけ。

 その赤い線もうす紫色になって、肌の中に溶け込むように消えてく。


「な、な、な、治ったぁ~っ!! 」


 あたしって、スゴイ! スゴイかもっ !!


 ヨウちゃんの左腕がふわっとあがって、あたしの頭の上にのっかった。

 アホ毛ごと、あたしの頭をくしゃっとなでる。


 ……あったかい。


 なんか、きゅ~ってちぢこまっちゃって、あたし、ペットのウサギになった気分。


「ほかも……お願い……」

「う、うんっ!」


 よ~しっ! めっちゃ、テンションあがってきた!



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