《1》記憶の実、ころり 3 - ナイショの妖精さん1
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《1》記憶の実、ころり 3

  19, 2018 18:45
2018091201




 ぶつぶつ言っていたら、ふっと頭の上に影ができた。


「どうした、綾(あや)?」


 見あげると、真央(まお)ちゃんの、大福みたいにふっくらした顔があった。

 いつものやさしい小さな目。くしゃくしゃやわらか、天然パーマのボブ頭。


「綾ちゃん、いっしょにお弁当食べよ」


 有香(ありか)ちゃんもやってきて、あたしの横にビニールシートを広げだす。

 黒いつやつやの髪を、ふたつにむすんで胸にたらして。黒縁メガネの下の目は切れ長。
 有香ちゃんは、同じ年なのに、あたしより年上のオネエサマみたい。

 ホッとしたとたんに、両目から、涙がドバ~。


「真央ちゃん、有香ちゃ~ん! あ、あ、あたし、お、お弁当、わすれちゃったぁ~」

「え~? 綾、ま~た、ドジったのか~?」

「しょうがないな~。綾ちゃん、わたしのお弁当わけてあげる」


 有香ちゃんは、バレエ仕込みの背筋をぴんとのばして正座して、自分のお弁当箱をあけた。


「あ。有香の、すごいうまそ! エビフライに頭ついてんじゃん!」


 真央ちゃんも、お弁当箱を開けながら、もう箸をくわえてる。

 真央ちゃんは女の子なのに男言葉をつかう。態度だって、まんま男の子。デニムのミニスカートで、でーんって、あぐらをかいて。むっちむちの太ももが見えちゃってても、ぜんぜん気にしてない。


「ほら、綾には、うちのミートボールと、おいなりさんやるよ」

「わたしからは、ミニトマトと、カボチャの煮つけと。あとウインナー」


 真央ちゃんが貸してくれたお弁当のふたに、次々増えていくおすそわけ。


「うえ~ん! 真央ちゃん、有香ちゃん! ありがと~」


 胸がじ~んとして、それだけでもうお腹がいっぱい。


「次は、気をつけなよ」

「うん! うんっ! 気をつけるっ!」

「って、言って、またなにかやらかすのが、綾なんだよな~」

「ひど~い、真央ちゃ~ん」


 真央ちゃんてば、ゲラゲラ笑ってる。

 あたしと真央ちゃんと有香ちゃん。小学校に入って以来の友だち。
 おまけに、六年の女子の中で、中条を好きじゃない貴重な三人組。

 だから、結束はかたい。


「そういえば、綾ちゃん。午後からがんばってね」

「え? ……えっと? なにを?」


 あたし、首をかしげて、アホ毛をくるん。


「班行動で、浅山の遺跡を調べるんでしょ。綾ちゃん、中条の班じゃん」





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