《5》 真夜中のダンスパーティー 8 - ナイショの妖精さん1
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《5》 真夜中のダンスパーティー 8

  02, 2018 18:22
2018112401



 ぼんやり、うす雲をまとったお月様。虹色の輪をつくっている。

 何種類も植わったハーブたちはみんな、黒い影になってしずんでる。


 お月様の虹色の輪から、チラチラと、銀色の光の粉がふってきた。

 光の粉がバラのアーチのそばまでおりてくると、羽をかたどっているのに気がついた。


 トンボの形の銀色の羽。


 羽をはやした手のひらサイズの男の子や女の子が、次々にハーブの上におりてくる。

 ヒソップのお花をぽんぽんゆらして遊ぶ、幼児体型の小さな子。

 ミントの葉からレモングラスの葉へ。バッタみたいにとびうつる、葉っぱの服を着た男の子。


「チンチン、チチチチ」

「キキキン、チチチ」


 心地のいい金属音。


 金色の髪を後ろにまるめて、綿毛の髪飾りをつけた女の子が、つっとあたしの前におり立った。


 あ……はじめて会った、あの子だ……。


 ツツジの雌しべみたいな足を、バレリーナみたいに交差させて。腕を背中で組んで。あごをちょっと引いて。トンボの羽をパタパタさせながら。上目づかいであたしを見ている。


「チチチチ」


 女の子は照れたみたいにまばたきして、白い右腕を、あたしの前にさしだした。

 むぎゅっとつばを飲み込んで、あたしも、女の子の手のひらに、そ~っと、右手をのせてみる。


 あ……おんなじだ。


 女の子の手の大きさと、あたしの手の大きさ、おんなじ。

 女の子は、つりあがり方の目で、おどけたみたいに、きゅっと笑った。


 後ろから、背の高い少女もやってきた。

 中学生くらいかな? 白くて長いレースのドレスに身を包んで。おとなびた顔立ち。

 女の子がふり返って、あたしの手のひらをその少女にさしだす。


 ……キレイ……。


 腰までのびる、ふわふわパーマの長い髪。白い小花のかんむり。左右にわけた前髪の下には、透きとおるような白い顔。

 やけどしてた、あのおねえさん。


「よかった、元気そうですね」


 あたしが少女の手を取ると、少女はふんわりほほえんだ。

 少女はあたしの右手をにぎって、右手を高く上に。手首をくるっとまわしたら、あたしの体は、コマみたいに一回転。


「え、ええっ!? 」


 くるり、くるりと数回転。


「な、なにっ!?  これっ! バレエ?」


 少女はにっこり笑って、あたしの手からいったん体を遠ざける。と思ったら、片足でつま先立ちして、今度は、あたしといっしょに数回転。

 二輪のアサガオみたいに広がる、少女のドレスと、あたしのワンピース。


 これ、ダンスだ……。


 まわりを見たら、ハーブの上で、妖精たちがペアになって、くるりくるりと回ってる。


 このリズム……知ってるっ!


 あたしがてきとうに吹いていた、笛のリズム。

 早くなって遅くなって。と思ったら、急スピード。


「あはははっ! は、早い~っ!! 」


 あたしの手を取って、少女もキラキラ笑う。

 くるりくるり。くるりくるり。

 踊る妖精たちの輪ができる。

 くるりくるり。くるりくるり。

 輪は、ハーブの上に小さなつむじ風を巻き起こす。



 バタン!

 玄関のドアが開いた。

 中からヨウちゃんが、小ビンをにぎりしめて出てくる。

 サンダルをつっかけた足がとまった。

 琥珀色の目が、妖精たちの輪にくぎづけになる。



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