《4》 羽開くとき 8 - ナイショの妖精さん1
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《4》 羽開くとき 8

  18, 2018 18:15
20181108



 背の高いヨウちゃんの背中は動かない。

 広い肩幅。足も長くって、上からリンちゃんを見おろしてて。なんだかすごく……おとなのオトコの人。


 どうしよう……ヨウちゃんが行っちゃう……。


 有香ちゃんや真央ちゃんが、恋したとたんに、遠い人になっちゃったみたいに。

 ヨウちゃんまでリンちゃんに恋をして、あたしを置いて、おとなになっちゃう。



「ごめん。オレ、倉橋とはつきあえない」



 ハッとして、あたしは顔をあげた。

 廊下で、リンちゃんはくちびるをかんで、うつむいていた。


「……なんで? やっぱり、中条君には好きな人が……」


「それは……自分でもよくわからない……」


 ……え? わからない?


「けど、そのことだけじゃなくて。オレには、倉橋とつきあう資格がないんだ。オレは、今まで倉橋のことを、自分をたててくれる女子としか思ってこなかった。オレの都合のいい程度にしか、見てこなかったんだ。

ごめん。こんなこと言われたら、傷つくよな。これからは、友だちとして、ちゃんと向き合うから」



「……そんなこと、知ってたよ」


 リンちゃんの声が、うわずってる。


「中条君が、わたしをちゃんと見てないことくらい、知ってた。それでもいい。わたし、いつかかならず、中条君にふり向いてもらうっ! だから、わたしが、本気だってことだけは、覚えといてっ!」


 リンちゃんの目が、ふっとヨウちゃんからそれて、窓越しに教室のあたしを見た。


 えっ!?


 猫みたいな上がり目に、ギンって、にらまれる。


「負けないからっ!! 」


 パッと、ミニスカートをひるがして、リンちゃんが廊下をかけだしてく。

 カタカタ、小さくなっていくランドセルの音。


 ド、ド、ド、ド、あたしの心臓の音ものすごい。


 な、なにっ!?

 なにが、どうなっちゃってんのっ!?


 あたし、リンちゃんの頭の中で、勝手に、恋のライバルにされちゃってるっ!?


 ガラッと、目の前のドアが開いた。


「って、う、うあっ!? 」


 入ってきたヨウちゃんが、たたらを踏んで、三歩さがる。


「あ、あ、あ、あ、綾っ! い、い、今の話、き、き、き、きいてた……?」


 ヨウちゃんの顔、見る間に、耳まで赤く染まってく。

 って思ったら、両手で顔をおおって、その場にぐしゃって、しゃがみ込んだ。


「うぁ~っ!!  信じらんねぇっ! 人生初で告白とかされたっ! なんだアレは。告白って、される側も、めっちゃ緊張するなっ!」


 なんだ……いつものヨウちゃん……。


 さっきまでは、カッコつけて、クールなふりをしてただけ。けっきょくのところは、ビビリのヘタレ。


「……綾?」


 安心したはずなんだけど。

 あたしの足は、そろそろと窓際へ遠ざかっていく。





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