
「けっきょく、綾ちゃんも、ほかの女子たちと同じなんだね。男子を顔で選ぶんだ。なんか、がっかり。中条なんて、顔がいい以外は、なんの取り柄もないサイテーオトコなのに」
「有香、ちょっと言いすぎ」
「だけど真央だって、そう思うでしょっ!? あいつが綾ちゃんに近づいたのはきっと、クラスの女子の中で、わたしたち三人だけが、自分のことを好きじゃないのが、気に食わなかったからなんだよっ! 綾ちゃんを落として、落ちたら落ちたで、どうせ、すぐにポイ捨てする気だよっ!! 」
ち、ちがうっ!
あたしの知ってるヨウちゃんは、そんな人じゃないっ!!
「有香ちゃん、やめてっ !!」
あたし、金切り声でさけんでた。
「ヨウちゃんは、そこまで身勝手な人じゃないよっ! ヨウちゃんにだって、いいところはいっぱいあるよっ! 校外学習のとき、あたしをさがしに来てくれたし。リコーダーだって、見放さないで最後まで教えてくれたっ! なんにも知らないで、ヨウちゃんのことを、そんなふうに言わないでっ!! 」
クラス中が静まり返ってる。
あたしたちのケンカ、みんなにもきかれちゃってる。
あたしは、うつむいたままで立ちあがった。
自分のうわばきだけを見つめて、自分の席へ歩いていくと、前に大きなうわばきが立ちはだかっていた。
「中条」って、うわばきに書いてある。
「……綾……」
ヤダっ! ほっといてよっ!!
うつむいたまま、あたしは、大きなうわばきから目をそらした。
ガタンとイスを引いて、自分の席に座って。つくえの上につっぷした。

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