《4》 羽開くとき 3 - ナイショの妖精さん1
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《4》 羽開くとき 3

  10, 2018 19:45
20181108



 三人で教室に入ると、窓際から、女子たちのひそひそ笑いがきこえてきた。

 あたしを見たとたんに、リンちゃんは青森さんと目配せ。そうしたら、青森さんの太い眉毛がひそまった。もっと冷ややかな笑いに、女子たちは包まれる。


「……マズイな」


 真央ちゃんが言うと、有香ちゃんもうなずいた。


「……うん。これはちょっとマズイかも……」


 ふたりに連れられて、あたしは廊下側の真央ちゃんの席の前に、座らされる。


「綾……ぶっちゃけきくけど。最近、どうしてそんなに中条と仲がいいんだ?」


「……え?」


 なんかドキっ!


「綾ちゃんて、中条のことが好きなの?」


「え、ええっ!?  ち、ち、ちがうよっ!! 」


 おかしなこと言われたら、夢のヨウちゃん、思い出しちゃうっ!


「た、た、ただの友だちっ!!  って言うか、校外学習からのくされえん?」


「くされ縁ならさ、切っちゃったっていいよね?」


 あたしは、ごくっとつばを飲み込んだ。



「……有香ちゃん……?」


 向かいを見たら、両手に丸いほっぺをのせて、真央ちゃんまでうなずいている。



「女子たちの中条への執着ってスゴイだろ? 特にリン。それがこのごろ、中条がなにかと綾にかまうから、あいつらイラついてんだよ」

「だけど、今までだって、あたし、リンちゃんたちに悪口言われてたよ?」

「今までとはちがうだろ? 今までは綾がドジしたことについて、あーだこーだ言ってたけど。今なんか、綾が教室に入っただけで、悪口言いはじめたぞ」

「わたしね、ちょっと怖いんだ……。女子たちがエスカレートしたら……。ね、大ごとになる前に、綾ちゃん、中条と関わるのやめなよ」


「有香ちゃん……真央ちゃん……」


 ふたりともやさしい。

 あたしのことを、本気で心配してくれてる。


 だけど……。


 あたしはぎゅっと、ひざの上でこぶしをにぎりしめた。


「ありがとう。有香ちゃん、真央ちゃん。でも、ごめんね。あたし、ヨウちゃんのこと、もっと知りたい……」


 妖精でビビリまくる、ヘタレヨウちゃんを見たい。

 麦わら帽子をかぶったガーディニングヨウちゃんも見たい。


 もっと、もっと、いろんなヨウちゃんを見てみたい。



「なんだ。綾ちゃんも、けっきょく顔かぁ……」



「……え?」


 あたしはビクッとして、顔をあげた。

 メガネが蛍光灯に反射していて、うつむいている有香ちゃんの目が見えない。





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