《4》 羽開くとき 2 - ナイショの妖精さん1
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《4》 羽開くとき 2

  09, 2018 22:53
20181108





「――うわっ!? 」


 あたしは、ふとんからはね起きた。

 朝の日差しが、ピンクのカーテン越しに差し込んできている。

 ベッドの横には、ハート型の赤い目覚まし時計。右肩にはクマのぬいぐるみ。左肩にはウサギのぬいぐるみ。

 見慣れた、いつものあたしの部屋。


「ゆ、ゆ、ゆ、夢っ!? 」


 心臓、まだバックバク。ほっぺた、湯気が出ちゃいそうなほどに熱い。




 夢ってさ。

 ちょっとした、テロだと思う。


 だって、あんなの見ちゃったら、イヤでも意識しちゃうじゃん!


 
 登校するだけで、あたしの肩は、緊張でガチンガチン。

 一年から六年まで入りまじってワイワイしている昇降口から、そーっと、くつだなをのぞき込んで。

 教室に向かう子どもたちの中に、あいつがいないことを確認して。

 手早く自分のたなからうわばきを出したら、うわばきの上に乗っていた紙が、パサッと足元に落ちてきた。


 ……ほぇ?


 ピンク色の封筒。

 クマの柄のシールをやぶいて開けてみると、ピンクの便箋に紫のラメペンで、丸文字が書かれていた。


《大事な話があります。放課後、屋上に来てください。 中条》


 ヨウちゃんから……?


 なんだろ? 

 なんだかわかんないけど、すっごくヘン。



「……綾」


 後ろから声をかけられて、アホ毛が、アンテナみたいにピンっとつっ立った。


「よ、ヨウちゃんっ!!  お、おはよっ!」


 反射的に、封筒を背中に隠して、あたしの目線ふわふわ。


 夢のヨウちゃん、思い出しちゃうっ!


 ヨウちゃんはぽりっと前髪をかいて、向かいのくつだなを流し見した。


「っと。あのさ。大事な話ができた。放課後……」


「あ、う、うんっ!」


 あたし、ガバっとうなずいた。


 違和感なんて、やっぱり気のせい。この手紙、まちがいなくヨウちゃんからだ!

「わかってる! もう読んだっ!」


「……え? 読?」


 はずかしくて、いっしょにいらんない。
 ランドセルをカタカタとゆらして、あたしは、ひとりで教室へ階段をかけあがる。


「綾~、おはよ~」


 ポンッと肩をたたかれて、「ひゃあっ!」ってとびはねる。

 真央ちゃんだった。
 となりには、黒縁メガネをかけた有香ちゃん。


「おはよ~。綾ちゃんそのワンピース、初でしょ? かっわい~」

「あ、うん。こないだママに買ってもらったの。レースがいっぱいだから、なんとなくはずかしくって、今までは着てこなかったんだけど……」


 でもね。夢の王子様とダンスするには、似合うと思って……。


 なんて、言えない。




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