《4》 羽開くとき 1 - ナイショの妖精さん1
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《4》 羽開くとき 1

  08, 2018 23:17
20181108







――だいじょうぶ。きみの背中には羽がある――


 琥珀色の瞳で男の人は言った。


――その羽を、きみ自身が信じられなくなってしまったら、きみの羽は抜けてしまうだろう――


 あたしは涙をこぼして、しゃくりあげながら、その人を見あげた。


――羽があることをわすれないで。そうすれば、いつかきっと、きみは空を飛んでいけるから――


 おじさんの大きな手が近づいてくる。小さなあたしの手のひらに、真珠みたいなアメが一粒、ころんと置かれる。


「うん、わすれないっ!!  あたし、羽があること、ぜったいにわすれないよっ!! 」




「……ああ。わすれてなかったようだな」


 あたし、まばたきした。

 おじさんのほっぺからしわが消えてる。あごはしゅっとひきしまって、肌は若くなって、つるっつる。


 ……あれ?


 さっきまでの茶色い背広が、虹色の長いマントにかわってる。

 ヘンな服。つめえりで、肩にモップみたいなビラビラがついていて。ズボンはもものあたりが、ぶくって、ふくらんでて。白いロングブーツ。


 もう一度、ぽかんと見あげたら、中折れ帽子じゃなくて、金色の王冠にかわってた。


 ど、どこの国の王子様っ!?


「……綾。恋する音楽、実は効いてたんだ。おまえが好きだ」


 両手がのびてきて、あたしの両手をぎゅっとつかむ。


「よ……ヨウちゃん……?」


 ドキッとした。


 王子様っぽい、ゴージャスなかっこうをしたヨウちゃんの背中に、大きなトンボの羽がある。


「妖精の世界から、おまえを迎えに来た。さあ、いっしょに帰ろう」


 えええええ~っ !?






2018092207







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