《3》 アホっ子ちゃん、がんばる 14 - ナイショの妖精さん1
fc2ブログ

《3》 アホっ子ちゃん、がんばる 14

  07, 2018 23:05
2018102201



 半分ふり返った体制で。琥珀色の目が見開かれている。


「……あ~。えっと……」


 ヨウちゃんは、自分の首の後ろに手を置いた。


「それは、オレの力じゃねぇよ。綾が自分でがんばった成果だ」


「……あたしの……成果?」


「そ~。おまえだって、やればできるってこと」


 琥珀色の瞳がふわっとやわらかくなる。


 ドキッとした。


 冷たい氷が溶けだして、あたり一面がお花畑にかわっていくみたい。
 
 ヨウちゃんの口元からあふれだした笑みが、顔中に広がっていく。


 あたしのほっぺた、ぽっと熱くなった。


「……え?」


 ヨウちゃんがまばたきした。


「え?」


 あたし、あわてて、自分のほっぺたを花束で隠す。

 カ~っと、ヨウちゃんのほっぺたが真っ赤に染まった。


 え、ええっ!?


 瞬間。腕でほおを隠して、ヨウちゃんが歩き出す。
 長い足でスタスタと。なんか、あたしから逃げてくみたい。


 な、な、な、なにこれっ!?




 教室に帰って、男子たちがもどってくる前に、あたしはアリッサムの花束を四つの花びんにわけて、教室の前の左右の角と、後ろの左右の角に置いた。


「授業中に、校庭に遊びに出るとはなんだっ!」


 担任の大河原先生に連れられて、男子たちが教室にしょんぼりもどってくる。

 ふわっと、やわらかな香りと、オーロラのような虹色の帯が、教室上空に立ち込めた。

 男子たちのほてったほおから、すーっと熱が引いていく。


「……あれ?」


 パチパチまばたきしたのは、誠。


「オレら、なにをあせって走りまくってたんだっけ?」


 大岩も、首をコキコキとかしげてる。


「おまえら、バツとして三時間目が終わるまで、教室の後ろに立ってろ!」


 先生に怒鳴られて、男子たちはしぶしぶロッカーの前にせいぞろい。

 くすくす笑う女子たち。


 あたしとヨウちゃんも校庭にいたんだけど。先生が来る前にもどってきたから、立たされるのをまぬがれた。

 授業中に教科書で顔を隠して、そっと後ろを見たら、一番後ろの席でヨウちゃんは、しらっと、シャープペンをまわしていた。






次のページに進む

前のページへ戻る



ほんブログ村



児童文学ランキング
スポンサーサイト



Comment 0

What's new?