
半分ふり返った体制で。琥珀色の目が見開かれている。
「……あ~。えっと……」
ヨウちゃんは、自分の首の後ろに手を置いた。
「それは、オレの力じゃねぇよ。綾が自分でがんばった成果だ」
「……あたしの……成果?」
「そ~。おまえだって、やればできるってこと」
琥珀色の瞳がふわっとやわらかくなる。
ドキッとした。
冷たい氷が溶けだして、あたり一面がお花畑にかわっていくみたい。
ヨウちゃんの口元からあふれだした笑みが、顔中に広がっていく。
あたしのほっぺた、ぽっと熱くなった。
「……え?」
ヨウちゃんがまばたきした。
「え?」
あたし、あわてて、自分のほっぺたを花束で隠す。
カ~っと、ヨウちゃんのほっぺたが真っ赤に染まった。
え、ええっ!?
瞬間。腕でほおを隠して、ヨウちゃんが歩き出す。
長い足でスタスタと。なんか、あたしから逃げてくみたい。
な、な、な、なにこれっ!?
教室に帰って、男子たちがもどってくる前に、あたしはアリッサムの花束を四つの花びんにわけて、教室の前の左右の角と、後ろの左右の角に置いた。
「授業中に、校庭に遊びに出るとはなんだっ!」
担任の大河原先生に連れられて、男子たちが教室にしょんぼりもどってくる。
ふわっと、やわらかな香りと、オーロラのような虹色の帯が、教室上空に立ち込めた。
男子たちのほてったほおから、すーっと熱が引いていく。
「……あれ?」
パチパチまばたきしたのは、誠。
「オレら、なにをあせって走りまくってたんだっけ?」
大岩も、首をコキコキとかしげてる。
「おまえら、バツとして三時間目が終わるまで、教室の後ろに立ってろ!」
先生に怒鳴られて、男子たちはしぶしぶロッカーの前にせいぞろい。
くすくす笑う女子たち。
あたしとヨウちゃんも校庭にいたんだけど。先生が来る前にもどってきたから、立たされるのをまぬがれた。
授業中に教科書で顔を隠して、そっと後ろを見たら、一番後ろの席でヨウちゃんは、しらっと、シャープペンをまわしていた。
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