《3》 アホっ子ちゃん、がんばる 12 - ナイショの妖精さん1
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《3》 アホっ子ちゃん、がんばる 12

  05, 2018 22:58
2018102201




「だけど……ヨウちゃん、吹くなって言ったのに……?」


 琥珀色の目、めちゃめちゃ冷たい。南極の氷みたい。ペンギンとか住んでそう。


 ……これ……あたしの演奏が下手だったからって、イヤがらせ……?


「綾ちゃん、いいよ、ほっときな?」

「なにがあったか知らないけど、綾は中条の言いなりになる必要ないからな」


 有香ちゃんと真央ちゃんにうなずきながらも、あたしはリコーダーに口をつけていた。

 だって、琥珀色の目に、金縛りにされてるみたい。


 そーっと、リコーダーに息を通してみる。

 くるくる回りだす万華鏡。

 きのうすっかりわすれたはずの曲を、指が勝手に奏でていく。



 キーンコーン、カーンコーン。


 遠くでチャイムの音がきこえた。

 リコーダーから、そっと口をはなすと、教室の中が静まり返っていた。


 リンちゃんや青森さんたちは、ヨウちゃんの横で、ぼんやりとつっ立ってる。

 有香ちゃんと真央ちゃんもあたしのそばで、じっとしている。

 ふり返ると、男子たちまで、動きをとめていた。

 誠はしゃがみこんで、サッカーボールを抱えている。大岩も、窪の席に向かい合わせで座って、こっちを見てる。

 ストップウォッチで「やぁ!」って時間を一時停止しちゃったみたい。教室の空気が止まってる。


「や、ヤバイっ!」


 教室の一番後ろの席。女子たちの真ん中で、ヨウちゃんがガタガタ立ちあがった。


「つい、やっちまった! 今のアレは、妖精の音楽だっ!」


「……妖精の……音楽……?」


 ドキンドキンと心臓が鳴る。


 それを、あたしが奏でてたの……?


 自分の胸から腕へ。指先へ。虹色の力が宿ってきているみたい。


「そ……それじゃ……やっぱりあたしは……」

「綾、逃げろっ!」


「えっ 」って思ったときには、ヨウちゃんに腕をとられて、走らされていた。


「な、なんでっ!? 」


 教室から出ようとすると、「和泉ぃ~」って男子集団にかこまれた。

 誠も大岩も窪も、ほっぺたピンク色。目はハート。


「和泉ぃ~、オレとつきあってくれ~!」

「和泉、オレのために、一生、あの曲を吹き続けてくれ~っ !!」


 ええっ!?  なんで急に、あたしモテモテっ !?


「アホか、おまえら、落ちつけっ!」


 ヨウちゃん、誠のひたいを平手打ち。

 男子たちがひるんだ拍子に、ヨウちゃんは、あたしを廊下に引っぱり出して、バシッと教室の前のドアを閉めた。


「マズイ。迷信とかって、ナメてる場合じゃなかったっ! 妖精の音楽は、マジで人を魅了するんだ。早く解かないと、めんどうなことになるっ!」

「み、みりょうって、なに?」

「惚れさせるってことだよ!」


 ほ、惚れっ !?


「って、ラブ? こ、恋する音楽っ!? 」


「ほかに、なにがあるっ!?  きのう、おかしいと思ったんだ。だから、おまえに『人前で吹くな』ってとめたのに。バカか、オレはっ! 女子たちがあんまり綾の悪口を言うから。綾は、ホントはすげぇ演奏できんのにって、ムカついて、つい……」


 え……? じゃあ、さっきの冷たい目は、あたしに怒ってたわけじゃなかったの?


「こ、恋する音楽なら、いいじゃんっ! そのままにしてよ! あたし、モテたい~っ!! 」





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