《3》 アホっ子ちゃん、がんばる 11 - ナイショの妖精さん1
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《3》 アホっ子ちゃん、がんばる 11

  04, 2018 20:59
2018102201



 クラス中、耳を押さえて「ぎゃ~っ!! 」


 うう、しょっぱなから、やっちゃったっ!


 目をつぶって、「レレレミレ」って吹きながら、ヨウちゃんに言われたことを思い出していた。


 ひとつの音を吹くたびに、頭の中で「1」ってかぞえる。のばすところは「1、2」。

 小節がかわるときは、吹くのを休んで「1」。


 ゆっくり、ゆっくり。秒針を読みあげる感覚で。



 最後に「ソー」って吹いて、目を開けたら、先生が名簿表に顔を落としながら「はい、オッケー」って言った。


 や、やったぁ~っ!!





 一発オッケーなんてはじめて!

 いつもは三回くらいテストを受け直して、最終的には先生にあきらめられて終わるのにっ!


「綾ちゃん、がんばったじゃん~っ !!」


 休み時間。音楽室から帰った、六年生の教室で。あたしは、有香ちゃんと真央ちゃんにかこまれた。


「すっげ~、ゆっくりだったけど、まちがえないで、最後まで吹ききったもんな。早送りすればきっと『カントリー・ロード』にきこえてたよ」


 真央ちゃんの「早送りすれば」ってとこが引っかかるけど。

 だけど、ふわふわピンクの気持ちは、リンちゃんたちの笑い声に消されちゃった。


「きょうもすっごかったね~! 和泉さんの演奏!」

「のっろ~いの! わたし、牛が歩いてるのを想像しちゃったよ 」

「あれで先生、オッケー出すんだもん。ズルくない~?」


 女子たちが、ヨウちゃんのまわりにあつまって、わざと大きな声でしゃべってる。


 ドンっと大きな音がして、リンちゃんたちが「わっ 」ってとびのいた。

 見ると、ヨウちゃんが組んだ足を、自分のつくえの上にのっけている。


 うわ~、行儀悪っ! イスにふんぞり返って、腕組んじゃって。


「綾。きのうのアレ、吹いてみろ」


「……え?」


 ……「アレ」って、もしかしてあの適当に吹いてた曲のこと……?






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