《3》 アホっ子ちゃん、がんばる 5 - ナイショの妖精さん1
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《3》 アホっ子ちゃん、がんばる 5

  27, 2018 22:48
2018102201



「ほっといてよっ! あたしは妖精なんだから、人間の勉強なんかできないのっ!」


 妖精だから、人間の世界だと暮らしにくい。

 妖精だから、人間なら一回でできちゃうことも、あたしは五回も六回もやらないとできるようにならないんだっ!


「おまえな……。まだ『自分は妖精』とか、アホなこと言ってんのか? なにが、妖精だ! 努力したくないからって、なんでもこじつけんなっ!」


 う~、ズキッズキっ!

 やっぱりこんなヤツに、大事な秘密、話さなければよかったっ !!


「綾。おまえ、オレに、『なんにも興味持たない』とか、『物事をちゃんと知ろうとする前にあきらめる』とかって、しかったよな! けど、おまえだって、自分の興味ないことには、努力もしないで逃げ出すじゃねぇか!」



「――はい。そこまで」


 後ろからヨウちゃんの頭に、音楽の教科書がふってきた。縦に。ゴンっと。


「か……角……」


 ヨウちゃん、頭を抱えてしゃがみこむ。


 後ろからあらわれたのは、真央ちゃん。


「中条、なにうちの綾、イビってんだよ?」

「行こ、綾ちゃん。こんな女ったらしの言うことなんか、気にしちゃダメだよ」


 有香ちゃんも階段をのぼってきて、あたしの肩を抱く。

 ふたりとも、音楽のあとに、先生の手伝いで職員室に行っていたから、ちょうど今、その帰りだったんだ。

 まだ頭を抱えてるヨウちゃんが、ちょっとかわいそうだけど。有香ちゃんと真央ちゃんに連れられて、ふり返り、ふり返り、あたしも教室に歩き出す。


「逃げんな、綾っ! 仲間に甘やかされて、ぬくぬくしてんなっ !!」


 うわ~ん、なによっ!

 かわいそうって思ったこと、取り消しっ !!


「ヨウちゃんこそ、いっつも女子をはべらかしてっ! 自分のプライドのために、女の子といっしょにいるようなヤツなんて、あたし、大っ嫌いっ!! 」






 ……言っちゃった。

 いいよね? 本当のことだもん。


 給食を食べ終わって、食器をかたづけている教室で。

 今だって、ヨウちゃんの横にリンちゃんが寄っていって、猫みたいに人懐っこい目で、ヨウちゃんを見あげてる。

 スパッツをはいてなかったら、お尻が見えちゃうくらいのミニスカート。ツインテールをとめているのは、ピンクのラメがキラキラのシュシュ。

 ヨウちゃんもまんざらじゃなさそう。リンちゃんのぶんの空いた食器まで、トレイの上から取り上げて。食器入れのかごに、かたしてあげてる。


 なにあれ? 紳士気取り?


 あたしは、箸で、ゴーヤをぷすぷす。

 いまだに給食を食べているのは、教室の中であたしだけ。

 先生が、「アレルギーのない人は、好き嫌いしないでなんでも食べましょう」なんて、きびしいことを言うから、おのこしできなくて、嫌いなゴーヤも食べなきゃなんない。


 きっと、妖精の世界にはゴーヤなんかないんだよ!


「倉橋ってさ、勉強できるだろ。やっぱ、塾とか通ってんの?」


 食器入れのかごの置かれた、黒板前から、ヨウちゃんの声がきこえてきた。


「や~ん。めずらし~。中条君からわたしに興味持ってくれるなんてぇ。そりゃあ、塾くらいは行ってるよ~? うちはママが、私立中学受験しろって、うるさいから。もう週五。遊べないしやんなっちゃうよ~」


「そうか。がんばってんだな」


 ヨウちゃんがニコッとしたから、リンちゃんの目、ハートマークに。


「きゃ~っ!!  中条君がほめてくれた~っ!! 」


 あ~もう、はいはい。




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