
四時間目は音楽の授業。
きょうはイヤな授業ばっかり。
って、思ったら、あたしの場合、毎日がイヤな授業しかなくなっちゃうんだけど。
でも、きょうの授業が特別重くなったのは、授業の終わりに先生が、「あしたはリコーダーのテストをします」って言い出したから。
サイアク!
ひとりひとり、みんなの前に出て、「カントリーロード」って曲を、最後まで吹かないといけないんだって。
「ねぇ、中条君。あしたの音楽は、和泉さんのおもっしろい演奏きけるよ~」
授業を終えて、音楽室からとぼとぼ帰るとき、リンちゃんの声がきこえてきた。
廊下の真ん中で、いつものように、ヨウちゃんのまわりを女子たちが取り巻いてる。
「わたし、さっきの音楽の席、和泉さんのとなりだったでしょ~。すごいの、もう。みんなより、ワンテンポもツーテンポも遅れてんの」
「みんなで、リコーダー合わせてる最中に、ぜったいポーとかピーとかヘンな音するじゃん。あれって、たいてい和泉さんの笛だよ!」
「ウッケる~」
……ああ、きょうもあたしの悪口、大盛況。
きこえないふりをして、足早に女子たちの横を通ろうとすると、「綾」って、呼びとめられた。
ビクッと、顔をあげる。
女子たちの中で、ヨウちゃんがあたしを見てる。
「おまえ、放課後、特訓な」
……ほぇ?
「ちょ、ちょっと中条君っ!? 」
リンちゃんの声が裏返る。
「ねぇ、きょうはどうしたの? 和泉さんにかまったりなんかして」
リンちゃんて、なんでいつも、あんなに自然に、ヨウちゃんのシャツにつかまれるんだろ?
猫が「遊んでよぅ」ってあまえるポーズ。
「リン~、中条君はやさしいから~。ほどこしでしょ? ダメな子にでも、手をさしのべてあげるって、わけよ」
太い眉毛をあげて青森さんが言ったから、女子たちはドッと大笑い。
なにそれ? どこの仏様よ!
あたしは、ほどこしなんかたのんでないっ!
リコーダーと音楽の教科書を胸に抱いて、パッと走りだしたら、「待て」ってヨウちゃんが、女子たちの輪の中からとび出してきた。
えっ!? な、なにっ!?
リンちゃんたちも、目が点のまんまで、あたしたちを見送ってる。
廊下を曲がったところで、あっさりヨウちゃんに追いつかれた。
後ろは壁。右は二階へおりる階段。
バンって、ぶっとい左腕が、あたしの右肩の上を通って、壁につく。
通せんぼみたいに、腕で行く手をふさがれちゃって、あたし、階段からおりられない。
「おまえな! なに、逃げてんだよ! いっつも、あんなこと言われてて、くやしくねぇのか? ムカつくなら、練習して見返してやればいいじゃねぇかっ !!」
なによっ! そんな説経するために、わざわざ追いかけてきたのっ !?
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