《3》 アホっ子ちゃん、がんばる 4 - ナイショの妖精さん1
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《3》 アホっ子ちゃん、がんばる 4

  25, 2018 22:14
2018102201



 四時間目は音楽の授業。

 きょうはイヤな授業ばっかり。

 って、思ったら、あたしの場合、毎日がイヤな授業しかなくなっちゃうんだけど。

 でも、きょうの授業が特別重くなったのは、授業の終わりに先生が、「あしたはリコーダーのテストをします」って言い出したから。


 サイアク!


 ひとりひとり、みんなの前に出て、「カントリーロード」って曲を、最後まで吹かないといけないんだって。


「ねぇ、中条君。あしたの音楽は、和泉さんのおもっしろい演奏きけるよ~」


 授業を終えて、音楽室からとぼとぼ帰るとき、リンちゃんの声がきこえてきた。

 廊下の真ん中で、いつものように、ヨウちゃんのまわりを女子たちが取り巻いてる。


「わたし、さっきの音楽の席、和泉さんのとなりだったでしょ~。すごいの、もう。みんなより、ワンテンポもツーテンポも遅れてんの」

「みんなで、リコーダー合わせてる最中に、ぜったいポーとかピーとかヘンな音するじゃん。あれって、たいてい和泉さんの笛だよ!」

「ウッケる~」


 ……ああ、きょうもあたしの悪口、大盛況。


 きこえないふりをして、足早に女子たちの横を通ろうとすると、「綾」って、呼びとめられた。


 ビクッと、顔をあげる。

 女子たちの中で、ヨウちゃんがあたしを見てる。


「おまえ、放課後、特訓な」


 ……ほぇ?


「ちょ、ちょっと中条君っ!? 」


 リンちゃんの声が裏返る。


「ねぇ、きょうはどうしたの? 和泉さんにかまったりなんかして」


 リンちゃんて、なんでいつも、あんなに自然に、ヨウちゃんのシャツにつかまれるんだろ?
 猫が「遊んでよぅ」ってあまえるポーズ。


「リン~、中条君はやさしいから~。ほどこしでしょ? ダメな子にでも、手をさしのべてあげるって、わけよ」


 太い眉毛をあげて青森さんが言ったから、女子たちはドッと大笑い。


 なにそれ? どこの仏様よ!

 あたしは、ほどこしなんかたのんでないっ!


 リコーダーと音楽の教科書を胸に抱いて、パッと走りだしたら、「待て」ってヨウちゃんが、女子たちの輪の中からとび出してきた。


 えっ!?  な、なにっ!?


 リンちゃんたちも、目が点のまんまで、あたしたちを見送ってる。



 廊下を曲がったところで、あっさりヨウちゃんに追いつかれた。

 後ろは壁。右は二階へおりる階段。

 バンって、ぶっとい左腕が、あたしの右肩の上を通って、壁につく。

 通せんぼみたいに、腕で行く手をふさがれちゃって、あたし、階段からおりられない。


「おまえな! なに、逃げてんだよ! いっつも、あんなこと言われてて、くやしくねぇのか? ムカつくなら、練習して見返してやればいいじゃねぇかっ !!」


 なによっ! そんな説経するために、わざわざ追いかけてきたのっ !?





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