《3》 アホっ子ちゃん、がんばる 3 - ナイショの妖精さん1
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《3》 アホっ子ちゃん、がんばる 3

  24, 2018 20:48
2018102201



 体育の恩田おんだ先生が、ピーっとホイッスルを吹いた。


「じゃあ、チームごとにあつまって、ドリブル練習はじめるぞ~」

「綾ちゃん、ファイト!」


 あたしの背中をやさしく押す、有香ちゃん。女子で一番高い身長。半そで短パンの体育着からのびる手足が、細くて長くて決まってる。

「じゃあな」って、真央ちゃんも、横っ腹のお肉をゆらしながら、あたしの前からはなれていく。


 え~ん。あたしも、ふたりのいるチームがいいよぉ~。


 納豆みたいに未練が糸引く足で、ズリズリ歩いていったら、「例のあいつ」はすでにドリブル練習をはじめていた。

 嫌味みたいにサラッサラの琥珀色の髪。嫌味みたいに琥珀色の真剣な目で、バウンドする手元のボールを見つめてる。


 琥珀色の目があがって、あたしを見た。


「和泉、パス!」


 バスケットボールが、なだらかな弧を描いて、あたしの手元にとんでくる。


 ヤダっ! パスなんかしないでよっ!


 あたしが、きゅっと肩をちぢこめてボールを避けたら、「おまえな~」って低い声。


「マジメに取れよ。ほら、拾ってこい。今度はおまえのドリブル練習だ」

 
 あ~もう、うるっさい。



 先生のホイッスルが鳴ったから、しょうがなくあたしもドリブル練習。

 あたしの横を、同じチームの窪くぼや青森あおもりさんが、三角コーンをぬって走ってく。

 あたしも、まりつきみたいにてんてんてん。ボールをついて、足を一歩。二歩……。

 三歩目を出したら、出した右のつま先にボールがあたって、ポンポンと前へ転げた。


 あ~あ。


「和泉、ボールばっかり見てんじゃなくて、走る先を見るんだ。で、ボールといっしょに走る」


 なんか、琥珀色の髪の人が、エラそうなこと言ってるけど、ききたくない。


「おい、和泉!」


 無視。


「和泉っ!!」


 やっぱり、無視。


「綾っ!」


 あたし、ぎょっとして顔をあげた。


 あたしの向かいでヨウちゃんが、腰にボールを抱えて、あたしをにらんでる。


「少しは人の話をきけ! スポーツなんてコツなんだよ」

「う、うるさいな、ほっといてよっ !! ヨウちゃんなんかに、運動オンチの気持ちがわかるわけないでしょっ!! 」


 ザワッと、まわりの子たちがあたしを見た。


「……え? ヨウちゃん……?」


 青森さんが立ちどまって、ぽかんとあたしとヨウちゃんを見比べてる。


 ……あ。下の名前で呼んじゃった。


「とにかく、綾はもう一度、スタート地点から、ドリブル練習だ。ほら、さっさと行け。練習時間がなくなるぞ! 次の試合は、大岩おおいわのチームとあたるんだからな! あっちには倉橋くらはしもいるし、強豪なんだから」


 倉橋っていうのは、リンちゃんの苗字。


 そうなんだよね……。


 リンちゃんは女子力が高くて、スポーツもできる。頭もとってもイイってうわさ。


 ヨウちゃんでも、リンちゃんの実力は認めてるんだ……。






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