
「現実にもどれ」
「……え?」
「おまえ、いいかげんにしろよ。おまえがアホっ子なのは、オレもよく知ってるけど。そこまでは、ナイだろ? そりゃあ、自分がファンタジーと同化して、夢の世界にひたってたいのもわかるけど。さすがにもう、そんなの通用する歳じゃねぇよな?」
え、えええ~っ !?
「なにそれ~っ !? ヨウちゃんだって、たった今、フェアリー・ドクターになったばっかりじゃないっ!」
「それはそれ。これはこれだ! まだ半分信じられねぇけど、妖精って生き物が、この世に存在するってことは、オレも認めなきゃならないのかもしれない。
けど、それはたとえば、新種の動物を見つけるのと同じだろ? 地球は広いんだから、オレらが認識してない生き物が存在する可能性は、もともと0パーゼントじゃない。
でもな、おまえの妄想は0パーセントだ! 人間として生まれてきた和泉綾は、どうあがいても、人間なんだよっ!! 」
「ひ、ひ、ひどい~っ!! あたし、この話、今までだれにもしてこなかったんだよっ !? ヨウちゃんなら、信じてくれると思ったのに~っ!」
サイアクっ!
もう、サイアクっ !!
せっかく、せっかく、見直したのに!
こんなヤツ、ただのオレサマで、ビビリでヘタレのへなちょこりんだーっ !!
キンコーン、カンコーン。
チャイムが鳴って、休日明けの二時間目がはじまる。
たいていの男子は目をかがやかせるけど、あたしは胃がぐ~って痛くなる、体育の時間。
体育着のシャツに着がえて。紺色の短パンをはいて。ダッサダサの紅白帽子なんかかぶらされて。
あたしは、砂ぼこりのあがる校庭で、む~って、ふてくされてる。
ほら、人間の世界ってさ、「ああなったらイヤだな」って思うときにかぎって、なぜだか、そのとおりになっちゃうこと、あるじゃん。
そう思わなかったら、たいていはならないのに、「きょうにかぎって、なんでよっ !?」ってこと。
例えばクラスのじゃんけん大会で、「勝ちのこった三人が、トイレ掃除当番」ってときに、勝ちのこっちゃったり。
大っ嫌いな人がいて、その人とだけはいっしょのチームになりたくないってときに、バッチリ、その人とあたっちゃったり。
たった今、それが、あったとこ。
なんであたし、バスケットボールまで、あいつと同じチームでやんないとなんないの?
こないだの校外学習のとき、同じ班で、がまんしたばっかりなのに!!
「いやぁ、今回の綾投入は、どう考えてもハンデだね。あいつは、体育だけはできすぎるから。チームの実力を平等にするために、先生が、運動オンチの綾を同じチームに加えたんだよ」
あたしのとなりで腕を組む、真央ちゃんのセリフが痛い。
く……あたしは、ハンデ。
次のページに進む
前のページへ戻る

にほんブログ村

児童文学ランキング
スポンサーサイト