
だって、しょうがないじゃない。
あたしは妖精なんだから。
人間の世界だと生きづらいんだよ。

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頭のてっぺんには、くせ毛がくるん。
あたし、肩につくくらいの長さの髪を、毎朝ドライヤーでのばして、ストレートにしてくる。だけど、この一房だけは、ぜったいに出てきて、そり返る。
これ、マンガとかアニメだと、「アホ毛」って呼ばれてる。
アホっ子の頭上にあって、アホっ子をさらにアホっぽく見せてるから、「アホ毛」。
「あれ~っ!? どうして? ない、ない、ない~っ!! 」
アホ毛をゆらして、あたしはリュックの中をかき回してた。
ママが今朝、用意してくれたお弁当。「持っていきなよ」って、リビングのテーブルに置いといてくれたのに……。
「あたしってば、リュックに入れるの、わすれちゃったんだっ!」
頭を抱えて空をあおいだら、抜けるような青だった。
六年生の校外学習。
九月に入ったけど、暑さはぜんぜんとれなくて、Tシャツの背中に汗がしみてくる。
ここは、学校から歩いて三十分行ったところにある、浅山あさやまっていう小さい山の、遊歩道を二時間のぼったところにある、そのてっぺん。
一見どこにでもある里山なんだけど、花田(はなだ)市の歴史がたくさんのこっている山なんだとか。
だから、「きょうは地元の歴史を勉強しましょう」 って、郷 土資料館のえらい先生がやってきて、午前中は「海がどう」とか「遺跡がどう」とかむずかしい説明をしてくれた。
そうして、待ちに待った、ランチタイム。
――の、はずなんだけど。
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