《2》 妖精のお医者さん 18 - ナイショの妖精さん1
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《2》 妖精のお医者さん 18

  21, 2018 22:40
20108092801


 ふわ……。


 右肩に、ホタルみたいな銀色の光を感じた。


 え……?


 自分の肩を見て、ドキンと心臓が鳴る。

 妖精の男の子。十歳くらいの赤いくるくる髪の子。
 あたしの肩に座ってる。

 反対側の肩も、ふわっと銀色に光った。

 ホタルブクロの帽子をかぶった女の子が、あたしの肩に両手をのせて、いっしょにブラックベリーの山を見つめてる。


 チカチカ、チカチカ。


 銀色の光の粒はきっと、妖精の羽のりんぷん。

 雪のようにふりそそいで、あたしの背中にもアゲハチョウの羽の輪郭をつくる――。


「い、和泉……?」


「……え?」


 中条をふり返ったら、妖精になった妄想が、頭の中でポンってはじけちゃった。


 もう……せっかく仲間になれた気分だったのに~……。



 ふっと、お花の香りがした。

 生ゴミのにおいが、太陽が地面をこがすにおいにかわってる。

 ブラックベリーの葉っぱの山が、虹色に光りだした。

 オーロラって、きっとこんな感じ。ビジュアルマッピングしたみたいに、葉っぱの表面で、虹色の帯がゆれている。


 葉っぱの下が、ごそっと動いた。

 ごそ、ごそ、ごそ……。

 葉っぱの下から、ツツジの雌しべみたいな腕が出てくる。


 すぐにもう一本、数センチの小さな腕がのぞいた。

 腕が葉っぱをおしのける。ぽこっと、小さな金色の頭がのぞく。

 ふわふわパーマの長い髪。小花のかんむりがよく似合ってる。左右にわけた前髪の下には、透きとおるような白い顔。

 青い寄り目で、つんとおとなびた顔立ち。

 中学生くらいの妖精の少女。


「な、治った……」


 少女は白いロングドレスで立ちあがると、背中をふり返った。背中で閉じていた銀色の羽が、ヨットの帆みたいに張られていく。

 チカチカ、銀色のりんぷんが、少女の細い体にふりそそぐ。


「チチチチチチチ」

「キンキンキンっ!」


 穴の中がにぎやかになった。

 あっちでもこっちでも、スプーンとフォークを打ちつけたような金属音が鳴りひびく。

 あたしの肩にとまっていた妖精たちが飛びあがって、少女の妖精のまわりをくるりくるりと舞いだした。


「治った! ねぇ、治ったよ、中条っ !!」


 あたしも立ちあがって、まだ穴の入り口に立ってる中条の両手を、両手でぎゅっとにぎった。


「ね、見たっ? 見たでしょっ !! あたしたちでも、妖精を治せたよ! あたしたち、本当にフェアリー・ドクターになったんだぁっ!! 」


「あ……ああ……」


 なんか中条の反応、うすい。まばたきばっかり、くり返している。


 まさか、まだ、妖精が怖くてかたまってるのっ !?


 ワッと、あたしたちの両肩を、銀色の帯が横ぎった。


「きゃっ!」


 一瞬だけ目をつぶって。あわてて目を開けて、帯の行ったほうに走る。






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