
なに、その……目……。
あったかくて、やわらかくて。でも、ゆがんでて、今にも涙があふれだしそうな。
「綾……大事にしろよ。羽」
「……うん」
「オレのかわり……なんだぞ……」
声が震えだす。ヨウちゃんは歯を食いしばって、またうつむいた。
「うん……」
ズキズキと胸が痛い。
肩の傷より、手や足の傷より、胸のほうがずっと痛い。
あたしの目から涙があふれて、ほおを伝っていく。
そのほおに、ヨウちゃんは土のついた手のひらをそえた。
……え?
ヨウちゃんのくちびるが近づいてきて、あたしのくちびるにそっとふれる。
しょっぱい。涙の味がする。
嗚咽がこみあげてくる。
あたしは目を閉じて、自分からヨウちゃんのくちびるにふれた。
しゃくりあげるあたしのくちびるに、ヨウちゃんがまたくちびるをつけてくれる。
しょっぱい。
しょっぱい……。
あたしのほっぺたは土まみれで。涙が土をドロドロにしめらせていく。
土のにおいがする。
夜のにおいがする。
「ヨウちゃん……」
目を開けると、あたしのほっぺたはヨウちゃんの両手に包み込まれてた。
眉をひそめ、琥珀色の瞳をゆがませ、でも、口元には、ほほえみをうかべて。あたしをのぞきこむ、ヨウちゃんのほおにも涙が伝っている。
幾筋も幾筋も。
顔についた土を、涙の川が押し流していく。
「……綾。きょうが終わったら、オレらは他人だ。話しもしない。目も合わせない。一番遠い存在になるぞ」
あたしたちの頭の上に、チカチカと、銀色の光の粒がふってきた。
ヨウちゃんといっしょに顔をあげると、丸いヤドリギの上で、妖精たちが踊っていた。
いつものくるくる激しいダンスとはちがう。
ふたりずつ手を取り合い、ほおを寄せて、ゆっくり左右にゆれている。
スローで静かなチークダンス。

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