《6》 ヤドリギの下で3

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 頭の上で、チカチカと銀色の光が舞った。


 あたしのりんぷん?


 ちがう。

 あたし今、羽を出してない。


 じゃあ、だれ……?


 銀色のりんぷんを撒きながらやってくるのは、トンボの形の羽をつけた手のひらサイズの小さな子たちだった。

 十人ほど一列になって、小さな体でするりするりと、木の幹をかわしていく。


「チチ……ヒメ……」


 みんな、どうしたんだろう? 顔をうつむけて、いつものにぎやかなおしゃべりもきこえてこない。


 静かな、静かな。妖精たちの列……。



「アヤちゃん。見つけた」


 ハッとしてふり返ると、ハグがクマザサの茂み越しに、あたしを見おろしていた。

 ひっと首をすくめる。

 ふりあげられる杖。その先で、トンボの羽が銀色に光る。



「チチチチチチ!」

「キンキンキンキンキンっ!」


 とたんに雑木林の中に、金を打ちつけるみたいな音が広がった。

 妖精の子たちの声。

 口々に妖精語をさけびながら、こちらに向かって飛んでくる。


「な、なんだっ!?  うるさい、やめろっ!!  な、なにするっ!? 」


 ハグが杖をふりまわす。

 その杖に、妖精がひとりしがみついた。ふわふわロングの金髪。白いロングドレス。中学生くらいのおねえさんの姿をした――。


「ヒメっ!」


 バレリーナみたいな服を着た女の子も、杖をつかんだ。


「チチっ!」


 ワッと妖精たちが、一本の杖にたかっていく。

 たくさんのトンボの羽にまみれる杖。あたりを銀色の光で明るくするりんぷん。


「チチチチチチ……」


 ヒメの目に浮かぶ涙に気づいた。

 ヒメだけじゃない。チチも泣いてる。ほかの妖精の子たちも、みんな泣いてる。


「キンキンキン! キンキンキン!」


 夜の雑木林に妖精たちの声がこだまする。まるで、空でまたたく星と星がぶつかりあって鳴っているみたいな。


「……杖に、妖精の羽がついてるから……」



 妖精たちにだって、心はある。

 自分たちの仲間が、ハグのせいで消滅したってこと、妖精たちは知っている。


 妖精たちの手が、ハグの手から杖を取りあげた。高く飛んで、ハグが手をのばしても、杖に手は届かない。


「き、きさまらっ!」


 十人の妖精たちは、杖をうめつくして飛び出した。


「ど、どこに行くのっ!? 」


 あたしの問いに、チチもヒメも答えない。

 頭の上一メートルくらいのところを、杖を手にして飛んでいく。


 ずるっと、ハグの足が動いた。

 茶色い背広を着た足が、見えない糸で引っ張られるみたいに、ずるずると妖精たちの列につられていく。


「な、なんだっ!?  やめろっ! 体が勝手にっ!! 」


 手をばたつかせ、身をよじるハグ。


「もしかして、これ……ゴールデンロッドの薬の力っ!? 」


 ハグと杖は一心同体だって言ってた。ってことは、磁石だったらN極とS極。

 ハグの手に杖がもどってくるかわりに、杖がハグからはなれたら、ハグの体だって、杖のところに引き寄せられていく。


 あたしはしめった地面に手をついて、クマザサの茂みから立ちあがった。

 コートは泥だらけ。腕も足も肩も痛いところが多すぎて、どこが痛いのかよくわからない。


「待って!」


 ふらつく足を引きずって、痛い左肩をおさえながら、あたしも妖精たちを追いかけた。


 木の枝のすき間からのぞくのは、満天の星空。その星と同じ色のりんぷんを撒いて、列をなしていく妖精たち。


 この長い列は、お葬式なのかもしれない。

 ハグに羽を切られて亡くなった、妖精たちの。



公開用 5巻 妖精を追って_2



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