
テレビの上のかけ時計を見あげたら、七時半。
「ママ……あたし、部屋に行って、宿題する」
手をふいて、キッチンから出てくると、ママが目を丸くした。
「綾、ホントにきょうはどうしちゃったの? あんたいつも、勉強サボって、ここで遅くまでテレビ見てるじゃない」
「きょうはなんか、勉強したい気分なんだ……」
口元だけでまた、へらっと笑って。あたしは階段をのぼって行った。
二階の自分の部屋のドアを開けると、勉強づくえの上のキッズケータイが目に入った。
待ち受けを見ても、着信もメールも入ってない。
……ヨウちゃん……。
電話したい。
だけど、電話なんかしちゃったら……。
そのせいで、ハグに計画がバレちゃったら……。
ダメ……ガマン。
ヨウちゃんは今、がんばってるっ!
チャラ……。
足元で音がした。
……え?
見おろすと、ネックレスがカーペットの上に落ちていた。
「……なんで……?」
しゃがんで拾いあげる。チェーンの留め具が、はずれて壊れてる。
「……ウソ……あたし……さわってもないのに……」
手のひらで、アゲハチョウのチャームがはかなく光ってる。
ドクドク、ドクドク。
心臓が嫌な音を立てる。
「綾~! ママは先に、お風呂に入るわね~っ!! 」
一階でママがさけんだ。
お風呂のドアを開ける音と、閉める音。
パパはいない。ママはお風呂。
あたしは震える手のひらに、アゲハチョウのチャームをにぎりこんだ。
……行くなら、今っ!
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