《3》 真実を追いかけて4 - ナイショの妖精さん5
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《3》 真実を追いかけて4

  17, 2022 22:23
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「わっ!? 」


 とびちった銀色の粉が、部屋の暗がりに舞い上がる。


 妖精が……りんぷんにかわったっ!?


 りんぷんは、花火のあとの火の粉のように、チラチラとまたたきながら、暗がりに吸い込まれていく。


「う、ウソっ!? 」


 ゆかの上には、なにものこってない。

 くるくる赤い髪も。男の子のぷにぷにほっぺも。葉っぱの服も。


――妖精は、羽を切られると消滅する――


 ヨウちゃんの声がよみがえってきた。


「しょ、消滅……っ!?  こ、こ、こ、これが……っ!? 」




「――だれか、いるのかね?」


 あたしはハッとふり返った。

 アーチ型の入り口に、スノーマンのような丸い人影が立っていた。

 丸いお腹に、水色の作業着を着たおじいさんが、砲弾倉庫跡に入ってくる。頭はつるつる。耳の横にだけ、灰色の髪がのこってる。


「い、い、鵤(いかるが)さん……っ!」


 あたしはふらっと立ちあがって、鵤さんの丸いお腹に抱きついた。


「あ、綾ちゃんかっ!?  どうしたんだ? なにがあったっ!? 」


「い、い、鵤さん、鵤さん……よ、妖精が……妖精が……」


 カタカタと腕が震えてとまらない。足にも力が入らない。


「……い、い、今……き、き、き、消えて……」


 ……消滅とは……死……。


 わかってはいたけど、こんなふうに目の当たりにするなんて。


 だって……あたしも……妖精……。

 
 ヨウちゃん、言ってた。あたしの場合、妖精は消滅しても人間のあたしはのこるって。


 だけど……妖精のあたしは消えちゃう。


 死んじゃう!!


「綾ちゃん、落ちついて」


 厚ぼったい鵤さんの手のひらが、ぽんぽんとあたしの背中をたたいた。




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