
「わっ!? 」
とびちった銀色の粉が、部屋の暗がりに舞い上がる。
妖精が……りんぷんにかわったっ!?
りんぷんは、花火のあとの火の粉のように、チラチラとまたたきながら、暗がりに吸い込まれていく。
「う、ウソっ!? 」
ゆかの上には、なにものこってない。
くるくる赤い髪も。男の子のぷにぷにほっぺも。葉っぱの服も。
――妖精は、羽を切られると消滅する――
ヨウちゃんの声がよみがえってきた。
「しょ、消滅……っ!? こ、こ、こ、これが……っ!? 」
「――だれか、いるのかね?」
あたしはハッとふり返った。
アーチ型の入り口に、スノーマンのような丸い人影が立っていた。
丸いお腹に、水色の作業着を着たおじいさんが、砲弾倉庫跡に入ってくる。頭はつるつる。耳の横にだけ、灰色の髪がのこってる。
「い、い、鵤(いかるが)さん……っ!」
あたしはふらっと立ちあがって、鵤さんの丸いお腹に抱きついた。
「あ、綾ちゃんかっ!? どうしたんだ? なにがあったっ!? 」
「い、い、鵤さん、鵤さん……よ、妖精が……妖精が……」
カタカタと腕が震えてとまらない。足にも力が入らない。
「……い、い、今……き、き、き、消えて……」
……消滅とは……死……。
わかってはいたけど、こんなふうに目の当たりにするなんて。
だって……あたしも……妖精……。
ヨウちゃん、言ってた。あたしの場合、妖精は消滅しても人間のあたしはのこるって。
だけど……妖精のあたしは消えちゃう。
死んじゃう!!
「綾ちゃん、落ちついて」
厚ぼったい鵤さんの手のひらが、ぽんぽんとあたしの背中をたたいた。
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