《3》 真実を追いかけて1 - ナイショの妖精さん5
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《3》 真実を追いかけて1

  01, 2022 22:51
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 塾から帰ってきて電話したら、ヨウちゃんはふつうだった。


「あのね、ヨウちゃん。学校でわたせなかったものがあるの! これから、おうちに行ってもいい?」


 きいたけど、「ダメ」ってことわられた。


「もう夕飯の時間だろ? こんな遅くに外出とか、おまえの親だって怒るだろ?」


「う~。そうだけど……」


 でも、バレンタインデーが終わっちゃう……。


「……いつでもいいから。あせんなくていいから……」


 ふんわり、あったかい声。

 胸の奥がきゅ~んってなる。

 まるで、「ずっとそばにいるよ」って言ってくれてるみたい。


 よかった。


 ヨウちゃん、放課後にあたしが誠といたこと、もう気にしてないんだ……。



 あしたは土曜日。午前中は塾があるけど、午後ならヨウちゃんに会える。


「そうだ、ヨウちゃん。あした、図書館に行く約束してたよね。じゃあ、午後一時に、市立図書館の前で待ち合わせしよう?」


「……ああ。オッケ」


 ふっと空気が抜けたような、ヨウちゃんの笑い声。


 よ~し! あしたこそ、チョコレートわたすんだからっ!!
 





「綾! ちょっと、早く下におりてきなさい」


 リビングでママが呼んでいる。


「え~?」


 あたしはまだ、ピンクのパジャマを着たまんま。もう七時半だけど、土曜日だからベッドでゆっくりしてたのに。

 右に左にとびはねた髪を手ぐしで直しながら、朝日のあたる階段をおりていくと、リビングで、ママが電話の受話器をさしだしていた。


「電話よ。中条さん……葉児君のお母さんから。綾にかわってって」


「……え?」


 一瞬で目が覚めた。


 ヨウちゃんじゃなくて……ヨウちゃんのお母さんから……?


 ……なんで?



「あの……もしもし? かわりました」


 受話器をぎゅっと耳に押し当てると、「綾ちゃん?」と受話器の奥から声がした。


「朝早くにごめんなさいね。ちょ、ちょっとききたいことがあって、電話させても、もらったの」


 お母さんの声、いつもよりもせわしない。早口だし、気が空回りして、つんのめっちゃったみたいに、つっかえる。


「あ、あのね、葉児から、なにか、か、かわったこと、きかされてない?」


「え? ヨウちゃんに? ……ううん」


 本当は、お父さんのことについてきいているけど。

 お母さんにそれを話すには、まずヨウちゃんに許可を取ってからだと思う。


「葉児がそっちに行ってるってことも、当然ないわよね」


「ないです……」


 心臓が痛いくらいに鳴りだした。


「お、お母さん、まさか、ヨウちゃん、家にいないんですかっ!? 」






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