
「かわいそうなヨージ! また、新たな傷が増えてしまったんだねっ! これは、たいへんだ! 妖精につけられた傷は、人間の薬では治らないっ!! さぁ、早くフェアリー・ドクターの薬を塗るんだっ! おおっ!! なんということだ! 薬ビンが割れてしまっているではないかっ!! 」
「てめぇ、白々しいんだよっ!」
押さえた肩のトレーナーが裂けて、細い血がしみだしてきている。
妖精から受けた傷を治す薬―レモンバームの塗り薬―は、こいつがとうさんの体に入ったとき、真っ先に捨てられた。
「おおっと、そんな大声を出すな! 店のセイコにきこえるぞ。書斎で親子ゲンカをしているなんて知られたら、セイコがどんなにかなしむか」
計画だ。ぜんぶ。
こいつ、オレを傷つけて、楽しんでいるっ!
書斎のつくえの上で、ピリリリリと電話が鳴った。
ハッとして、子機の小さな液晶画面を見る。登録してある電話番号。綾の携帯電話。
……綾……。
胸がやわらかくなって、小さな灯がともる。
ハグに取りあげられる前に、オレは子機を胸に抱きしめた。
「はははは。そんなに必死にならなくてもいい。おまえたちの恋路を、親のわたしが邪魔するつもりはない」
ハグを避けて廊下に出ると、後ろからかわいた笑い声がきこえきた。
「ヨージ。アヤちゃんには、なんでも話していいからね。そうして早く、アヤちゃんにケガを治してもらいなさい。そのケガを治せるのは、ざんねんながら今は、あの人間の体を持った妖精の、羽のりんぷんだけなのだから!」
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