《2》 バレンタインデーは大好きなキミと9 - ナイショの妖精さん5
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《2》 バレンタインデーは大好きなキミと9

  14, 2022 21:43
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「……綾。おまえは出てくるな」


 ヨウちゃんの手が、ぐいっと、あたしの肩を後ろに引きもどす。


「だ……だけど」


「帰るよ。帰りゃいいんだろ」


「ヨージ、行くぞ」


 ヨウちゃんはもう、あたしたちを置いて、お父さんの後ろをついていく。

 いつもみたいに、両手をコートのポケットにつっ込んで。だけど、肩を丸めて、うつむいたまま。


「……和泉。今の葉児、ヘンじゃなかった……?」


 校門から出ていくふたりを見送りながら、誠がつぶやいた。


「……うん」


「なぁ。あの人って、本当に葉児の父親なわけ?」


 ドキッとして、誠をあおぐ。クリクリした目は澄んでいて、まっすぐにお父さんの背中を見すえている。


「たしかに、ふたりとも顔はそっくりだけど。あの人、父親の目してなかったぞ」


 誠って、やっぱり、カンがいい……。


「あ、あたしっ! ふたりを追いかけるっ!」


 あたしはパッと走り出した。


「え? 和泉っ!? 」


「誠、バイバイ! またあした~」


 校門からとびだして、道を左に走り出そうとすると、「綾! 待ちなさい」って、女の人の声で呼ばれた。


「ほ、ほぇ?」


 すっごくきき覚えのある声。毎日、家のリビングできいているせいで、とっくの昔にききあきた声。


「ま、ママっ!? 」


 ふり返って、ぎょっ!

 校門の真ん前に、ママの真っ赤なスポーツカーがとまっていて、運転席の窓からママが顔を出している。

 サングラスを頭に乗せて、髪の毛をくるくるのたてロールにして。赤いくちべにが、けばけばしい。


 うわ~! これ、ぜったい、モデルの仕事帰りだ!


「綾? 家はそっちじゃないでしょ。学校帰りに、どこ行くつもりなのっ!?  あんた、こないだの土曜日も塾サボったでしょっ! 高いお月謝払ってるのに、サボリなんて、もう二度と許さないからねっ!」


 助手席のドアが開いて、あたし、ママの手で車の中につれ込まれる。


「ぎゃ~っ! 人さらい~っ!! 」

「なに言ってんのっ! さ、塾まで送っていくわよっ!!  誠君、またね~」

「え? あはは。さ、さようなら」


 引きつり笑いで、手をふる誠をのこして。

 車は、ブゥ~ンと走り出した。




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