
バラを一輪、花のつけ根ぎりぎりまで、土の中に植え込んだみたいな。
種類は、ブリキ缶ごとに、微妙にちがうらしくって、赤紫色をしている花も、花びらの先っぽだけ、ピンク色した花もある。
ひとつの缶にさしてあるピックを見て、あたしは思わず、手に取った。
「綾桜(あやざくら)っ!? 」
綾……って、だって、あたしの名前……。
「いらっしゃいませ。あら、多肉植物に興味があるの?」
顔をあげると、青いエプロンをつけた店員のおねえさんが、両手に葉ボタンのポットを抱えていた。
「……たにく……?」
「それね、多肉植物っていう種類の葉っぱなの」
「ウソ……これ、お花じゃなくて、葉っぱなんですか……?」
「そうよ、葉っぱ。バラの花の形をした、葉っぱ。葉っぱの中に、水をたくわえているから、多肉植物は乾燥に強いの。それにね、そのセンペルビウムって種類は、冬の寒さにも強いのよ。まるで、一年中枯れない花ね」
「……一年中枯れない花……」
両手のひらにすっぽりおさまるブリキ缶を抱えて、あたしはたたずんだ。

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