
チョコレートのにおいが、キッチンに充満している。
かいだだけで、舌がべとべとになるくらい、甘ったるいにおい。
有香ちゃんちは、ピカピカの真っ赤なキッチン。大きな外国製のオーブンまでそろってる。
有香ちゃんのお母さんが部屋でパソコンの仕事をしている間、あたしたち三人は自由にキッチンをつかっていいことになった。
だから今は、あたしたち三人の貸切りキッチン。
「にしても、チョコづくりって、アレだよな~」
真央ちゃんが、まな板の上で板チョコをトントン刻みながら、つぶやいた。
「チョコを刻んで、なべであっためて、ドロドロにもどして、別の型にかため直すだけじゃん? それって、チョコの形をかえるだけってことだし。『つくる』とは言えなくない?」
「そんなこと言ったって、チョコをカカオからつくるのなんてムリだから。ケーキやトリュフをつくるのも、レベルが高すぎるでしょ?」
って、有香ちゃん。赤いエプロンをして、赤い三角巾をつけて。黒縁メガネが決まってる。
「ああ、たしかに。若干一名、幼稚園児なみのがいるしな」
「真央ちゃん、ひどいっ! あたしだって、いっしょうけんめいやってるのに~」
あたしが包丁でチョコを、トンっとたたいたら、パリンと破片が、真央ちゃんのほっぺに飛んでいった。
「イッタぁ~。こらぁ、綾ぁ!」
「わっ!? ご、ごめ~ん」

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