《1》 はじめまして、お父さん9 - ナイショの妖精さん5
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《1》 はじめまして、お父さん9

  03, 2022 20:56
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「……く……」


 腕で顔をおおって、ヨウちゃんが前のめった。


「かあさんが……よろこんでんだよ……。とうさんがもどってきてくれたって……。な、中身がちがう……。けど……あいつは……とうさん役を演じきってる……。オレが……オレさえガマンすれば……」


「……ヨウちゃん」


 あたしは丸めたヨウちゃんの背中に、ぎゅっと両手をまわした。

 あたしの胸に顔をうずめるヨウちゃん。まるで、小さな子みたい。


「……オレ……自分の手で、かあさんからとうさんを取りあげるなんて……もうイヤだ……」


 ヨウちゃんの嗚咽が、廊下のすみにたまった冷たい空気に溶けていく。


 ヨウちゃん、ガマンしてたんだ……。

 すごくすごく、苦しんでたんだ……。


「だけどさ……あいつが本気出したら、また何するかわかんないんだよ?」


「そんなのわかってる。だから、オレが見張ってる。綾にだって、会わせないようにしてたんじゃねぇか……」


 だからきのう、あんなに……。


「ねぇ、あいつの目的ってなんなんだろ? 体を手に入れれば、もう、それでいいのかな?」


「目的……。それは、たぶん、オレに対する仕返しだ」


 ヨウちゃんの目が、キッとするどくなって廊下を見すえた。


「ええっ!?  なんでっ!?  そんなの逆恨みなのにっ!」


「あいつは……自分が黒いタマゴにかえられてしまったことに対しても、恨んでいる気がする。体がないのも、白い妖精として生まれてこられなかったことも。ぜんぶ、オレのせいだって言ってる」


「そ、それならなお、そんな、危ないヤツ、そばに置いといちゃダメじゃんっ! お母さんのことが気になるのはわかるけど、それよりあたしは、ヨウちゃんのほうが心配だよっ! ね、早くあいつを消滅させる方法、考えようっ!! 」


「……綾」


「書斎だと、お父さんが入ってきて、調べものできないならさ。図書館に行こうよ。家のハーブがつかえないなら、鵤さんの植物園に行けば、手に入るでしょっ!?  あたしんちで、フェアリー・ドクターの薬、つくればいいじゃんっ!」


「……そうか。……そうだな」


 ヨウちゃんのほおに、赤みがさした。

 あたしの胸から、顔をあげて、ヨウちゃんは、自分の足で立ちあがった。


「やりようなら、いろいろあるんだな」


 キンコーンと、チャイムが鳴った。


「ああっ! お昼休みがもう終わっちゃった」


「綾、じゃあ、放課後に図書館行かないか? まず、あいつが何者か調べたい。姿を消してるせいで、手がかりがなかった前とはちがって、あいつは今、オレの前に姿をあらわしている。正体をあばく、手がかりになるかもしれない」


「うんっ!」って言いかけて、あたし「あ~っ 」ってさけんだ。


 きょうは、有香ちゃんちでチョコをつくる約束してたんだっ!




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