《1》 はじめまして、お父さん2 - ナイショの妖精さん5
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《1》 はじめまして、お父さん2

  09, 2022 18:42
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 あたしの頭のてっぺんには、くせっ毛が一束くるん。


 これ、アホ毛。アニメとかマンガだと、アホっ子の頭にはえる毛に、認定されてる。

 お約束どおり、あたしはアホっ子。

 勉強も運動も苦手。歌うのも絵を描くのも、料理するのも苦手。


 だけど、あたしにはカレシがいるんだもんねっ!




「ヨウちゃんっ!」


 放課後。

 あたしはランドセルをカタカタ言わせて、高台の住宅街につづく坂道をのぼっていた。

 先行くグレーのランドセルは、遠くて遠くて、走っても走っても追いつかない。


「ヨウちゃんってば、どうしてきょうも先に、学校から帰っちゃうの~っ!? 」


 坂のとちゅうから、両手をのばして、あたしは、ヨウちゃんの左腕にしがみついた。

 それでやっと、琥珀色の髪がふり返る。


「綾……。ワルイ。今、ちょっと家がごたついてて、あんま、いっしょにいる余裕ない」


「え~っ!?  あたし、きょうこそヨウちゃんちに寄りたかったのに~っ! だってヨウちゃん、おとといからそんなこと言ってるじゃん。あたしと勉強会するって、ママにした約束はどうなったのっ? あっという間に、キャンセルって、それヒドくない~?」


 あたしに腕をつかまれても、ヨウちゃん、顔色ひとつかえない。おとなの男の人並みに高い身長。しゅっととがったあご。イギリス人と日本人のハーフの、鼻筋の通ったととのった顔立ち。

 琥珀色の瞳が、冷たくあたしを見おろしている。


 ……あれ? あたし、これじゃあ、ただのウザイ、かまってちゃん?

 あたし……ヨウちゃんのカノジョ……だよね?


「……ごめん。だよね……。だれにでも、いそがしいときはあるよね」


 あたしはうつむいて、ヨウちゃんのモッズコートのそでから、手をはなした。


「……あたし、帰るね」

「あ、綾っ!?  ちがう……」


 ヨウちゃんの手がのびてくる。あたしのピンクのコートの腕をつかみかけて、だけど、手は宙をかいて、モッズコートのポケットの中にもどっていった。


「……そのうち、綾に言わなきゃならないことがある。けど、今はまだ、自分の中でも、うまく整理がついてない。ワルイけど、もうしばらく待って」


 え……? な、なにそれ……?


「まさか……ヨウちゃん……あたしのほかに、好きな子ができたの……?」


「は、はぁ~っ!? 」


 ヨウちゃんの声が裏返った。


「なんで、そうなるんだよっ!? 」


「だって……」


 冷たい態度。「言わなきゃならないこと」ってきたら、やっぱり……。


「んなわけねぇだろっ! オレたち、あんなことあってから、まだ、たったの二週間だぞっ! そんなころころ、人の頭ん中がかわるかよっ!!  オレはそんなに器用じゃないっ!! 」


 ほっぺたを真っ赤に染めて、こぶしをかためるヨウちゃん。


 あ、よかった。いつものヨウちゃんだ。




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