
「……え?」
ヨウちゃんが、眉をひそめた。
「羽があれば、あたしの体は軽くなる。運動オンチのあたしが、くるくるとんだり、はねたりできる。妖精たちとだって踊れちゃう。
じっさいに羽を出さなくてもいいの。羽があるってことを、自分が知ってるだけでいい。だって、そうすれば、心の中で、みんなに自慢することができるもん。『こんなあたしでも、スゴイところはあるんだ』って、思えるもんっ!
だからあたし、羽はなくしたくないの。ぜったいにっ!」
「……そうか」
ヨウちゃんが、ふっと肩をゆらした。
「やっと、綾の気持ちがわかったよ。話してくれて、助かった。原因不明で逃げられるよりも、ずっといい」
えっと……あれ……?
ヨウちゃんが、ちょっとよそよそしかったのって、まさか、そのせい?
あの雨の日に、「羽を切ったりしない」って言ってくれたから。それで、解決かなって思ってたんだけど。
ヨウちゃんの中では、あたしに避けられてたことのショックが、まだのこってた?
「ご、ごめんね、ヨウちゃん!『怖い』って逃げたりしてっ!! あたし、思い出したの。うちのママに、『相手の気持ちを大切にしろ』って、言われてたこと。ヨウちゃんは、いつもあたしの気持ちを大切にしてくれるけど、あたしはしてなかった!」
「……いいよ、もう……」
……え?
トクンと心臓が鳴った。
ヨウちゃんの右腕が、あたしのところにのびてくる。
寒さで赤らんだ手のひらが、あたしのほっぺたにひんやりふれる。
「……綾にはホントの気持ち……いっぱいもらってる……」
キレイな瞳。ちょっとうるんでて、琥珀の宝石みたい……。
「……ヨウちゃん……」
頭がぼ~っとしてきて、ほっぺたに熱がこもってくる。
見とれてたら、ヨウちゃんは、ぐっと口をひきむすんだ。
あれ? なんかかたまってる……?
手のひらもなんか、カチコチしてるし、へんな汗かいてるし。

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