
ヨウちゃんにケータイをさしだしたら、ヨウちゃん、耳にケータイをつけて、息をすぅ~。
「ふざけんな、誠っ!! 勝手に人を巻き込むなっ!! 」
きゃ~っ!!
とつぜんの大声に、あたしの耳までキーン!
そばで、鵤さんが苦笑いしてる。踊っていた妖精たちも、上空で目をパチパチさせている。
「うわ~、うるっさいな~。耳がつぶれたらどうすんだよ。なんだよ、葉児もそこにいたの~?」
「おまえ、もうインフルエンザ治ってんだろっ!? なんで学校出て来ないんだよっ!? 」
「あはは~。残念ながら、ただ今、外出禁止期間中です~。インフルエンザは人にうつったらたいへんだからね。熱が下がってから二日たたなきゃ、学校に行けない決まりなんだよ~だ」
ホントに。ヨウちゃんの耳から、誠の大きな声、ダダもれ。
「いいじゃん、葉児。デートだよ?」
「……え?」
ヨウちゃんの目がしばたいた。
「オレのかわりに、和泉とイチャイチャしてきなよ」
う……。
ヨウちゃんが横目であたしを見てくる。
あたしが、目をそらしてうつむくと、ヨウちゃんは自分の首後ろに手を置いた。
「……そんなの。おまえに言われなくても、じゅ~ぶんイチャイチャしてんだよ……」
って。……なんか、気まずい……。
ヒースの茂みに妖精たちをのこして。
鵤さんと手をふって、わかれて。ふたりきりになった、浅山からの帰り道。
登山道を歩くあたしたちの手は、つながれないまま、宙ぶらりんでゆれている。
だって……。ママに「人前でイチャつくな」って言われてるし……。
でも……だれも歩いてない山道って、「人前」? 「人前じゃない」?
誠にあんなエラそうなことを言っておきながら、ヨウちゃんだって、あたしの目を見ずに知らんぷり。
なによ……ちっともイチャイチャしてないじゃん……。
登山道の出口が見えてきた。
ここからは、アスファルトのくねくね道。くだっていくと、ヨウちゃんちのある、高台の住宅街に出る。
あ~あ。「人とすれちがわない、ふたりきりの道」終わっちゃったぁ。
「はぁ」って息をはきだして、あたし、アスファルトで立ちどまった。
「……あのね、ヨウちゃん。あたしって、運動オンチでしょ?」
「……は?」
先を歩き出していたヨウちゃんが、あたしをふり返る。
「勉強もできないし、音痴だし、なんの才能もなくて。アホっ子で、ドジばっかり」
「綾……? もう、やめろって。そういう自分をおとしめるようなこと言うの……」
「だからね、あたし、羽が大事なの」
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