《5》 あたしという名の集合体4 - ナイショの妖精さん4
fc2ブログ

《5》 あたしという名の集合体4

  29, 2021 21:40
4-5.jpg


 ヨウちゃんの右の小指の先が、ピクっと動いた。


 トレーナーから手をはなして、あたしはうつむいた。


「いつも助けてくれて、ありがと。――って、言いたかったの」


 う……なにこれ……。


 今さら、ドドドドって心臓の音すごくなる。


 そろっと上目でうかがったら、ヨウちゃんは、時がとまったみたいにかたまってた。

 目、丸いまんま。半分ふり返った姿勢のままで、ぼうぜん。


 う、うわ……どうしよ……。

 もしかして、まちがっちゃったっ!?


 あたし、理科室で「あたしがキスしたいのはヨウちゃんだけ」って絶叫しちゃったけど。

 でも、考えてみれば、ヨウちゃんがだれとキスしたいかなんて、きいてない。


 やっぱり、こんなお子ちゃまとなんかじゃ……イヤだよね……。


 涙があふれそうになって、ひざに置いたこぶしに力を込めたら、右肩がふっとあったかくなった。


 ……え?


 ヨウちゃんの左手が、あたしの肩にのっている。


 ギ……と勉強づくえのきしむ音がした。

 つくえの上に右手をついて、ヨウちゃんが体重をかける。

 見あげたら、石膏みたいに白いほお。鼻筋の通ったキレイな顔立ち。


 え……近い。


公開用 4巻 キス直し_2




 イスに座ったあたしと向かい合って、おおいかぶさるようにして。

 ヨウちゃんは目を閉じて、くちびるで、あたしのくちびるにそっとふれた。


 あったかい。


 冷たいヨウちゃんのくちびるから、こぼれた吐息があったかい。


 ……ヨウちゃん……。


 きゅうっと、胸をしめつけられた。


 目を開けたら、琥珀色の瞳にあたしの顔がうつりこんでいた。

 目のふち赤くて、熱くって、熱がどんどんあふれだしてくる。

 ほほえんでるのに、泣いてるみたい。


 ふわっと、アホ毛ごと、あたしの頭に手を置いて。

 それから手をはなして、ヨウちゃんは部屋から出て行った。


公開用 4巻小さめ あああ…_2





次のページに進む

前のページへ戻る



コミカライズ版もあります!!


【漫画シーモア】綾ちゃんはナイショの妖精さん


【漫画kindle】綾ちゃんはナイショの妖精さん


【漫画動画1巻1話】



にほんブログ村


児童文学ランキング

スポンサーサイト



Comment 0

What's new?