
……はぁ?
あたし、廊下でぽかん。
ヨウちゃんもぽかん。
「い、い、いや、いくらなんでも、それはねぇだろっ!? 」
ヨウちゃんがガバっと、身をそらせた。
って、思ったら、ガタンと、つくえにわき腹をぶつけてる。
「ってぇ~」
左のわき腹を押さえて、ちぢこまるヨウちゃん。こうなったらもう、ただのヘタレた三枚目。
「い、いくらあいつがアホっ子だって、さすがに、お、オレたちが思ってんのと、おんなじ『好き』だろっ!! そうじゃなかったら、急に抱きついてきたりとか、そんなことできないよなっ!! 」
ぎゃ~!! さらにバラした~っ!!
だけどリンちゃんは、うれしそうに、下からヨウちゃんの目をのぞきこんでる。
「へぇ。抱きついちゃうなんて、和泉さんって、意外と大胆なんだね~。でもさ。小さい子って、自分のお父さんに、ぎゅ~ってしたりするよね?」
「は……?」
ヨウちゃん、目を見開いて、かたまった。
「ほら、中条君は、背が高くて、おとなの人って感じでしょ。だから、和泉さんは、お父さんを好きなのと、中条君を好きなのをまちがっちゃったんだよ」
……なんでよ? そんなわけないじゃん!
だけど、ヨウちゃんは、つくえに左手をついたまま、砂の像になっちゃったみたい。さわったら、サラサラと砂がくずれていきそう。
ミニスカートをゆらして、リンちゃんがヨウちゃんにつめ寄った。
「かわいそうな、中条君。ね、もう、あんな子やめて、わたしにしよ?」
リンちゃんの細い人差し指が、くいっと、ヨウちゃんのあごの下に置かれる。
ヨウちゃん、ぼんやり、されるがまま。
「って、な、な、なにやってんのよ~っ!! 」
あたしはバーンッと、前のドアを開けはなった。
「リンちゃん、てきとうなこと言うのも、いい加減にしてっ!! そんなわけないじゃんっ! あたしが、こんなヘタレオトコを、パパといっしょにするわけないじゃん~っ!! 」
ふたりの前に、ズカズカ歩いていって、ビシッとヨウちゃんを、指し示す。
「あ……綾……おまえな~」
ヨウちゃん、涙目。
「なによっ! なんで和泉さんが、ここに、のりこんでくんのよっ!! 」
「リンちゃんが階段をおりてくのを追いかけたら、二階でまがったから、おかしいなって思ったのっ! 勝手に人のカレシに、手を出さないでっ!! 」
ふたりの間に割って入って、両手を横に広げて。ヨウちゃんの前でリンちゃんをとうせんぼ。
「はぁ~? なにが、『カレシ』よ! お子ちゃまのくせに、そんな言葉だけは知ってるんだ?」
「『お子ちゃま』連発しないでっ! ちょっと背が低いとか、顔が子どもっぽいとか、苦手なことが多いとか、そんなことで、あたしを決めつけないでっ! あたしが、誠を許したのは、『されたことは、しょうがないから』だもん。
あたしだって、イヤだったもん。あたしだって、ヨウちゃん以外の人と、キスなんかしたくないもんーっ!! 」
なんでか、両こぶしをかためて、絶叫。
ぜえぜえ、肩で息をつきながら、今さら、ぽっぽとほっぺた熱くなる。
あ、あたし……なに言っちゃってんだろ……?
「……綾……」
ぎゃ~っ!! 今、ぜったい、後ろをふり返れないっ!
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