《4》 黒い妖精の黒いワナ7 - ナイショの妖精さん4
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《4》 黒い妖精の黒いワナ7

  15, 2021 21:48
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 ……はぁ?


 あたし、廊下でぽかん。

 ヨウちゃんもぽかん。


「い、い、いや、いくらなんでも、それはねぇだろっ!? 」


 ヨウちゃんがガバっと、身をそらせた。

 って、思ったら、ガタンと、つくえにわき腹をぶつけてる。


「ってぇ~」


 左のわき腹を押さえて、ちぢこまるヨウちゃん。こうなったらもう、ただのヘタレた三枚目。


「い、いくらあいつがアホっ子だって、さすがに、お、オレたちが思ってんのと、おんなじ『好き』だろっ!!  そうじゃなかったら、急に抱きついてきたりとか、そんなことできないよなっ!! 」


 ぎゃ~!! さらにバラした~っ!!


 だけどリンちゃんは、うれしそうに、下からヨウちゃんの目をのぞきこんでる。


「へぇ。抱きついちゃうなんて、和泉さんって、意外と大胆なんだね~。でもさ。小さい子って、自分のお父さんに、ぎゅ~ってしたりするよね?」


「は……?」


 ヨウちゃん、目を見開いて、かたまった。


「ほら、中条君は、背が高くて、おとなの人って感じでしょ。だから、和泉さんは、お父さんを好きなのと、中条君を好きなのをまちがっちゃったんだよ」


 ……なんでよ? そんなわけないじゃん!


 だけど、ヨウちゃんは、つくえに左手をついたまま、砂の像になっちゃったみたい。さわったら、サラサラと砂がくずれていきそう。

 ミニスカートをゆらして、リンちゃんがヨウちゃんにつめ寄った。


「かわいそうな、中条君。ね、もう、あんな子やめて、わたしにしよ?」


 リンちゃんの細い人差し指が、くいっと、ヨウちゃんのあごの下に置かれる。


 ヨウちゃん、ぼんやり、されるがまま。




「って、な、な、なにやってんのよ~っ!! 」


 あたしはバーンッと、前のドアを開けはなった。


「リンちゃん、てきとうなこと言うのも、いい加減にしてっ!!  そんなわけないじゃんっ! あたしが、こんなヘタレオトコを、パパといっしょにするわけないじゃん~っ!! 」


 ふたりの前に、ズカズカ歩いていって、ビシッとヨウちゃんを、指し示す。


「あ……綾……おまえな~」


 ヨウちゃん、涙目。


「なによっ! なんで和泉さんが、ここに、のりこんでくんのよっ!! 」

「リンちゃんが階段をおりてくのを追いかけたら、二階でまがったから、おかしいなって思ったのっ! 勝手に人のカレシに、手を出さないでっ!! 」


 ふたりの間に割って入って、両手を横に広げて。ヨウちゃんの前でリンちゃんをとうせんぼ。


「はぁ~? なにが、『カレシ』よ! お子ちゃまのくせに、そんな言葉だけは知ってるんだ?」


「『お子ちゃま』連発しないでっ! ちょっと背が低いとか、顔が子どもっぽいとか、苦手なことが多いとか、そんなことで、あたしを決めつけないでっ! あたしが、誠を許したのは、『されたことは、しょうがないから』だもん。

あたしだって、イヤだったもん。あたしだって、ヨウちゃん以外の人と、キスなんかしたくないもんーっ!! 」


 なんでか、両こぶしをかためて、絶叫。


 ぜえぜえ、肩で息をつきながら、今さら、ぽっぽとほっぺた熱くなる。


 あ、あたし……なに言っちゃってんだろ……?


「……綾……」


 ぎゃ~っ!!  今、ぜったい、後ろをふり返れないっ!




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