《4》 黒い妖精の黒いワナ5 - ナイショの妖精さん4
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《4》 黒い妖精の黒いワナ5

  12, 2021 21:54
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 ランドセルを背負って、廊下に出ると、女子トイレから、リンちゃんが出てくるのが見えた。


 あれ? 帰ったわけじゃなかったんだ……。


 リンちゃんはあたしに気がつかないで、ひとりでどんどん階段をくだっていく。そのまま一階の昇降口までおりるのかと思ったら、二階の廊下で、東にまがった。


 ……え?


 二階には三、四年生の教室がならんでいる。


 リンちゃんって、弟か妹がいたっけ?


 だけどリンちゃんは、下級生の教室には目もくれず、廊下の先へ進んでいく。


 二階の東はじは、理科室――。


 そういえば、リンちゃん……いつ、先生に、ヨウちゃんを理科室に呼び出すように言われたんだろ?

 帰りの会の後も先も、ずっと教室にいたのに。


 ツインテールがふわっとなびいて、理科室の中に消えた。


 えええっ!?


 パシン。

 ドアが閉まる。


 ど、ど、ど、どうなっちゃってんのっ!?


 あたしも理科室に走り寄って、前のドアから、そっと中をのぞきこんだ。

 すぐに目に入ったのは、教室の奥からさしこむ窓あかり。白くぼんやり、濁ってる。

 外は雨降り。細いしずくがいく筋も、窓ガラスを伝ってる。シルエットになった薄暗い理科室には、水道のついた実験用の大型づくえが六台ならんでる。

 つくえの前で、ふたりの男女が、ぼそぼそと会話していた。


「じゃあ、先生が呼んでたって、あれ、ウソか? 倉橋、なんでこんなことしたんだよ。オレ、きょうは、わりとたてこんでたんだけど。ウソならもう、行くぞ」


 目が慣れてきて、ドアのほうに歩き出すヨウちゃんが見えた。


 リンちゃん、ウソだったんだ!

 先生が呼んだっていうのは、ヨウちゃんとふたりきりになるための口実……。


「待って、中条君っ!」


 リンちゃんの細い手がのびてきた。


「あのねっ! わたしね、試験に落ちちゃったのっ! 中条君、わたしのこと、かわいそうだって、思わないっ!? 」


 や、ヤダ、なにあれっ!?


 リンちゃんの両腕が、後ろからするっとヨウちゃんの左腕にからみつく。


公開用 4巻 リン_2




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