《4》 黒い妖精の黒いワナ4 - ナイショの妖精さん4
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《4》 黒い妖精の黒いワナ4

  08, 2021 21:01
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 放課後。

「バイバイ~」とか「さよなら~」とか「またな」とかが、とびかう教室で。

 ランドセルを背負っていると、「中条君」って、声がきこえてきた。

 ふり返ると、リンちゃんが、一番後ろの席のヨウちゃんの前に立っている。


「大河原先生が呼んでたよ。『理科室に来い』だって」


「……え? 理科室? なんでオレが? オレ、べつに、理科係じゃないし。理科室つかった実験も、このごろないけど……」


 ヨウちゃんはランドセルをかついで、眉をひそめてる。


「さ、さぁ? わたし、知らない。わたしは伝えるように言われただけだから」


 ツインテールを舞わして、リンちゃんはぷいっと、ヨウちゃんから顔をそむけた。

 スタスタと大またで、教室から出ていく。


 わ……寄せつけないオーラ全開……。


「リンってさ……」


 女子たちのひそひそ声がきこえてきた。


「私立、落ちたんだって」

「親に『ぜったい受かれ』って、言われてたらしいじゃん」

「リン、性格キツイから、きょう一日、怖くて話しかけられなかったよ」

「わたしも~。ちょっとでもふれたら、キレられそうだったもんね~」


 こういうのって、あたしがなんにもしゃべんなくても、けっきょく、クラス中に広まっちゃうもんなんだね。


「みんな、影口はやめようよ」


 青森さんが制してるけど、いったん火がついちゃったら、女子の集団はとめられない。


「そんなこと言ったって、紀伊美だってさ~。たまにつかれない?『なんでいつも、リンに合わせてあげてんだろ』って、思うときない?」


「だ、だから、そういう話は……」


「あ、わたし、ある~」

「わたし、わたしも~」

「紀伊美も、ひとりで受かってよかったじゃん。リンといっしょだったら、中学生になってまで、リンの言いなりだよ?」


「そ、そんなっ!!  わたしは、言いなりになんか、なってるつもりはっ!」


 青森さん、顔を真っ赤にして反撃してる。だけど、女子たちはきいてない。


「中条君のことだってさ~。正直言って、『いつまで、くっついてんの?』ってカンジだよね? 和泉さんも、あんなにベタベタされたら、イヤでしょ?」


 ぎゃっ! とつぜん、あたしにふられてもっ!


「あ、あたしは……えっと。や、ヤだけど……。でも、こういう悪口も、イヤで……」


 オタオタしてたら、ヨウちゃんが、あたしの席までやってきた。


「綾、オレ、これから理科室に行って来る。夜に電話するから」


「……でんわ?」


「電話で話すくらいなら、もんくないだろ? どうがんばっても、オレは、おまえに手を出せねぇ距離にいるんだから。じゃあな、かならず出ろよ」


「う……うん……」


 ハァと、ヨウちゃん、ため息。肩をすぼめて、廊下へ出ていく後ろ姿、心なしか小さい。


 ……ごめんね。


 羽を切ること。

 ヨウちゃんなりに、悩んで考えて、話してくれたってことは、わかってる。


 そういえば、ママ、言ってた。

「お互いの気持ちを大切にして、自分がどう動くかを考えていってほしい」って。


 あたし今……ヨウちゃんの気持ちを、大切にしてる……?






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