《3》 広がりゆく闇5 - ナイショの妖精さん4
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《3》 広がりゆく闇5

  21, 2021 20:48
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「え? ……えっと……」


 ここは、ウソでも怖がって見せるところ?


「ちょっとぉ~、少しはおどろいてよ~っ!」


 誠が、顔の前にかかげたお面をおろした。


「和泉さ。長縄大会のことなんか、わすれちゃいな? あんなの、たいして力を入れたイベントでもなかったじゃん。それより、来月って、節分でしょ? オレさ~、こないだ児童館に遊びに行ったら、豆まきの鬼役やって~って、たのまれちゃったんだよね。和泉ぃ。鬼の顔って、こんな感じでいいと思う?」


 誠、大きな目をクリクリ。


 ……誠、もしかして、あたしを元気づけに来てくれた……?


「うん、いいカンジ。誠の鬼さん、カッコイイよ」


「うわっ!?  ホントっ!?  和泉がほめてくれたー!! めっちゃ、うれし~っ!! 」


 わ……。誠、笑顔全開。ヒマワリみたい。


「なぁなぁ、和泉も豆まきに来ない~? 二月三日の放課後なんだけど~」



「あ~ムリ。その日、こいつ、オレとデート」


 とつぜんの低い声にぎょっとしたら、誠の背中で、ヨウちゃんが仁王立ちしてた。


 ヨウちゃん、さっきまで、自分のつくえで読書してたのに。


「綾、ちょっと話がある」


 ヨウちゃん、親指をたてて、廊下のほうにくい。


「……え? う、うん……」


 ヨウちゃんはもうきびすを返して、ひとりでさっさと、教室の後ろのドアへ歩いていく。

 あわてて、あたしも席から立ちあがって、ハッとした。

 誠が口をとがらせて、うつむいている。


「あ……。ま、誠、豆まきの話は、もうちょっと考えさせて!」


「……い~よ。無理して、来てくれなくても……。どうせ、和泉は葉児とデートなんだろ?」


 ピリッと、また心臓が裂けた。

 うつむいたまんまの誠の目。ドロドロに濁ってる。





「――なにか、おかしいと思わないか?」


 廊下に出ると、ヨウちゃんは腕を組んで、窓に背中で寄りかかっていた。眉をひそめてむずかしい顔。


「うちの学校の長縄大会なんて、たかが、ひまつぶしの行事だろ? みんなだって、それくらい、わかってるはずだ。なのに、あれは、どう考えても騒ぎすぎだよな。だいたい、綾が運動オンチで、いろいろやらかすのは、今はじまったことじゃないのに。なにを今さら……」


 う……。

 それ……あんまり、フォローになってないような……。


「まさか、クラスのヤツらのほとんどに、黒い妖精がとり憑いてるのか? けど、見た感じじゃ、よくわかんねぇな。いや、でもなんで、寄ってたかって、このクラスの連中にばっか、とり憑く?

綾に集中砲火する理由も説明つかない。ぜんぶ、オレの考えすぎか? そもそも、人をののしることと、黒い妖精に、関連性があるかどうかも、まだ、さだかじゃない……」


 口元に手を置いて、むずかしいことを、ぶつぶつ、ぶつぶつ。

 アホっ子のあたしには、理解できないよ。



「――綾、日曜に浅山行くぞ」


 窓の外を流し見していたヨウちゃんの目が、ふっとあたしにもどった。


「……え?」


「オークとホーソンとアッシュの香で、黒い妖精を呼び出して、一網打尽にする」


「えっと……オークとホーソンとアッシュのお香って、たしか、燃やすと妖精があつまってくる……」


「ああ。前もつかったな」


 でも日曜は、ヨウちゃんが、あたしんちに来るはずだった日……。





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