
「紀伊美? 何言ってんだよ? 和泉にはまったく関係ないだろ?」
「なによ、智士君っ!! 和泉さんの肩を持つ気っ!? 」
青森さんの首後ろで、銀色の羽が光った。
黒い胴に黒い頭。黒い手足を持った虫のように小さな人間が、青森さんの首にしがみついている。
「っ!」
ヨウちゃんが、青森さんの後ろで、柏手を打った。
「……え?」
青森さんがまばたきする。
「……あれ? わたし……?」
怒りで染まったほおから、赤みが抜けていく。
パチパチと目をしばたかせて、それから青森さんは後ろのヨウちゃんをふり返った。
「……中条君? 何してるの?」
「……あ……えっと……。いや……その、なんだ?」
柏手を打った両手を閉じたまんまで、ヨウちゃん、愛想笑い。だけどすぐに真顔にもどって、背すじをのばした。
「青森。今は人のせいにしてる場合じゃないだろ? 窪に、話すことがあったんじゃないのか?」
青森さんの目に、強く澄んだあかりがともった。
「う、うんっ!」
「葉児? なんの話だ? さっきの黒い虫みたいなのは、いったい……?」
青森さんは、ぎゅっとくちびるをかみしめて。
窪のわきの下に、両腕をまわすと。
顔をうずめて、抱きついた。
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