《2》 もうひとつのカップル8 - ナイショの妖精さん4
fc2ブログ

《2》 もうひとつのカップル8

  04, 2021 22:17
4-2.jpg



「やだ、中条君は心配ないでしょっ!?  そんなにカッコイイんだもん。和泉さんのほうが、心配するならわかるけど」


 って、青森さん、しつれい!


 そりゃ……あたしには取り柄がないから。そう思われても、しかたがないんだけど……。


「いや、不安になるよ。あいつは、素のオレを好きになってくれたから。けど、そしたら、つくったりとかしても、意味ないじゃねぇか。前、あいつ、『マジメなオレがカッコイイ』とか言ってたから。きょうはマジメぶって、メガネかけてみたんだけど。あいつには、ぜんぜん効いてなかったみてぇだし」


 って、じゃあ、あのチャラ男メガネは、あたしが引き金っ !?


 青森さんは、口にこぶしを置いて、ぷっと吹き出した。


「ウソっ!?  中条君でも、空回りしてたのっ!?  カワイイっ!」


「い、言うなよっ! とにかく、まったくもって、あいつのツボがわかんねぇんだ。だから、怖い……。誠にポッと持っていかれる気がする……。

あいつら、フィーリングが合うから。そういう、感覚の似ているもの同士がくっつくのが、自然の流れだろ? オレは今、かろうじて、その流れをとめてるだけ。けど、一度、そういう流れができたらもう、外野がどうもがいたって、とめられない。

そうなったら、たぶん終わりだ。だから……そうならないようにしたければ、オレが努力するしかないんだ……」


 ……ヨウちゃん……。


――綾は、オレのものじゃないから、『やらない』とは言えない。けど、オレは、オレが持ってる全部をつかって、綾をおまえに取られないようにする。それでも、『取る』って言うんだったら、やってみろ――


 クリスマスのあの日。どんな気持ちで、誠にあんなこと言ったんだろ。


 ヨウちゃんのあせりも、空回りも気づかないで。

「こんな陰険な人がカレシだなんて、ヤダぁ~」なんて。あたし、ヒドイこと……。


「って、青森の悩みをきいてたつもりが、なんで自分語りになってんだ、オレっ!?  ご、ごめんなっ!! 」


 青森さんは「ううん」と、口の中で笑った。


「ちょっと元気出た。中条君みたいな人でも、そんなふうに悩むんだもんね。わたしだって、がんばらなきゃ。考えてみたら、わたし、智士君に告白されたからって、いい気になってて、自分のほうから、ちゃんと『好き』って気持ち、伝えてなかった。まずは、伝えることからはじめなきゃだね!」


「……そうだな」


 琥珀色の瞳がふわっと細まった。


 あ……あたしの好きな笑顔。


「青森はカワイイぞ。ちゃんと自信持てよ」



「――なに言ってんだよ、葉児」


 背中から、ざらつく男子の声がきこえた。

 ハッとして、あたしはふり返った。





次のページに進む

前のページへ戻る



コミカライズ版もあります!!


【漫画シーモア】綾ちゃんはナイショの妖精さん


【漫画kindle】綾ちゃんはナイショの妖精さん


【漫画動画1巻1話】



にほんブログ村


児童文学ランキング


スポンサーサイト



Comment 0

What's new?