
「やだ、中条君は心配ないでしょっ!? そんなにカッコイイんだもん。和泉さんのほうが、心配するならわかるけど」
って、青森さん、しつれい!
そりゃ……あたしには取り柄がないから。そう思われても、しかたがないんだけど……。
「いや、不安になるよ。あいつは、素のオレを好きになってくれたから。けど、そしたら、つくったりとかしても、意味ないじゃねぇか。前、あいつ、『マジメなオレがカッコイイ』とか言ってたから。きょうはマジメぶって、メガネかけてみたんだけど。あいつには、ぜんぜん効いてなかったみてぇだし」
って、じゃあ、あのチャラ男メガネは、あたしが引き金っ !?
青森さんは、口にこぶしを置いて、ぷっと吹き出した。
「ウソっ!? 中条君でも、空回りしてたのっ!? カワイイっ!」
「い、言うなよっ! とにかく、まったくもって、あいつのツボがわかんねぇんだ。だから、怖い……。誠にポッと持っていかれる気がする……。
あいつら、フィーリングが合うから。そういう、感覚の似ているもの同士がくっつくのが、自然の流れだろ? オレは今、かろうじて、その流れをとめてるだけ。けど、一度、そういう流れができたらもう、外野がどうもがいたって、とめられない。
そうなったら、たぶん終わりだ。だから……そうならないようにしたければ、オレが努力するしかないんだ……」
……ヨウちゃん……。
――綾は、オレのものじゃないから、『やらない』とは言えない。けど、オレは、オレが持ってる全部をつかって、綾をおまえに取られないようにする。それでも、『取る』って言うんだったら、やってみろ――
クリスマスのあの日。どんな気持ちで、誠にあんなこと言ったんだろ。
ヨウちゃんのあせりも、空回りも気づかないで。
「こんな陰険な人がカレシだなんて、ヤダぁ~」なんて。あたし、ヒドイこと……。
「って、青森の悩みをきいてたつもりが、なんで自分語りになってんだ、オレっ!? ご、ごめんなっ!! 」
青森さんは「ううん」と、口の中で笑った。
「ちょっと元気出た。中条君みたいな人でも、そんなふうに悩むんだもんね。わたしだって、がんばらなきゃ。考えてみたら、わたし、智士君に告白されたからって、いい気になってて、自分のほうから、ちゃんと『好き』って気持ち、伝えてなかった。まずは、伝えることからはじめなきゃだね!」
「……そうだな」
琥珀色の瞳がふわっと細まった。
あ……あたしの好きな笑顔。
「青森はカワイイぞ。ちゃんと自信持てよ」
「――なに言ってんだよ、葉児」
背中から、ざらつく男子の声がきこえた。
ハッとして、あたしはふり返った。
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