
大声でさけんじゃったら、帰りかけていたクラスメイトたちが、いっせいにこっちを見た。
「え? ウソっ!? マジかよ、窪っ!」
「おい、それヒミツだって」
「紀伊美、本当~?」
「そういえばこないだ、紀伊美、同じ塾の人がカレシだって言ったよね……」
男子たちは窪のところへ、女子たちは青森さんのところへあつまっていく。
みるみる騒ぎが大きくなる。
あ……。マズイこと言っちゃった?
青森さんのほっぺた、真っ赤っ赤。
リンちゃんが、青森さんの後ろから、ポンッと肩を抱いた。
「そ。ナイショにしてたけど、紀伊美、二学期の終わりのころ、塾で窪から告白されたんだよね。それからつきあってるの。クリスマスなんて、東京に遊びに行ったんだから」
クラス中、「え~っ!? 」って大もりあがり。
「なにそれ~っ!? ラブラブじゃん~っ!」
「窪って、意外と肉食系っ!? 」
「じゃあ、うちのクラスのカップル第一号は、葉児と和泉じゃなくって、窪と青森だったんだなっ! 」
あ……この騒ぎ、身に覚えがある……。
ヨウちゃんとつきあいだしたとき、あたしも、みんなに大騒ぎされた。
ヨウちゃん自体がめだつから、つきあい出したらいろいろ言われることは、わかってたけど。それでもすごくはずかしくて、家に帰っちゃいたくなった。
キャアキャア騒ぐクラスメイトたちの中で、窪は、ぎゅっとこぶしをにぎりしめている。
「ち、ちがうっ! つきあってるわけねぇだろ……」
歯のすき間から、声がもれた。
「なんでオレが、青森なんかと、つきあわなきゃならないんだよっ!! 」
教室が静まり返った。
みんな顔を青くして、窪と青森さんを交互に見てる。
「……ヒドイ……智士君……」
青森さんの目から涙があふれた。
「紀伊美っ!? 」
リンちゃんの腕から逃れて、青森さんがかけだす。
前のドアに立つヨウちゃんの横を通って。ドアわくに手をかけ、ふり返った青森さんの目が、キッとあたしをにらみつけた。
「……和泉さんのせいだからっ! 和泉さんがあんなこと、大きな声でさけぶからっ!! 」
ビクッと、心臓がちぢみあがった。
「紀伊美、待ってっ!」
リンちゃんを待たずに、青森さんは廊下に走り出た。
廊下を小さくなっていく足音。
金縛りがとけたみたいに、教室の中が動きだす。
「バっカじゃねぇの、窪っ! なに言っちゃってんだよっ!? 」
「さっさと、青森にあやまってこいよっ!! 」
男子たちの真ん中で、うつむいたままの窪。
「ねぇ、みんな! 紀伊美をさがしに行こうっ!」
バタバタと廊下に出ていく、リンちゃんのグループ。
あたしは、教室の前のドアにかけよった。
「ヨウちゃん……どうしよう。あたしのせいで……」
「綾、オレたちも青森をさがすぞ!」
「う、うんっ!」
今は、あたしとヨウちゃんでケンカしてる場合じゃない。
あたしは廊下の右に、ヨウちゃんは左にかけだした。
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