《2》 もうひとつのカップル2 - ナイショの妖精さん4
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《2》 もうひとつのカップル2

  26, 2021 20:49
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「あはは。葉児ってば、そんな警戒しないでも、オレ、和泉になんもしないよ? だいたい、ラブラブ期のカップルなんかに手ぇ出したって、玉砕するに決まってんでしょ! オレはかしこいからね。ヘタなことはしないの。時期をうかがって、葉児のすきをつくんだよっ!」


「誠。その作戦、言っちゃってる時点で、かしこくないから」


 真央ちゃん、お腹を抱えて、ゲラゲラ。

 だけど、ヨウちゃんは眉間のシワを険しくして、無言でさらに、あたしの肩を、誠から引きはなした。


 そっか。やっぱり、誠ってかしこいや。


 わざと言っちゃうことによって、ヨウちゃんに、すきをつくれなくしてる。

 つまり、ヨウちゃんは、誠に手を出されないように、ずっと気を張ってなきゃならなくなったってこと。


「……ねぇ、そんな心配しないでも、だいじょうぶだよ?」


 あたしは、モッズコートのそでぐちを、つっと引いた。

 そしたらやっと、ヨウちゃんの腕があたしの肩をはなした。

 かわりに、ポンって頭にのっかる、大きな手のひら。


「ほ、ほぇっ!? 」


 目をつぶって、また開けたら。モッズコートの背中はもう、自分の席へ歩き出してる。


 ヨウちゃん、学校では、クールなフリ。

 ビビリなことも、フェアリー・ドクターだってことも、みんなにはナイショ。





 休み時間。教室がざわついている。


「中条君が本読んでる……」


 女子たちはみんな、ほっぺたを赤く染めて、チラチラ、一番後ろの席をふり返ってる。

 そこにはヨウちゃんが座っていて、有香ちゃんみたいな黒縁メガネをかけて、左手でほおづえをついていた。

 右手に持っているのは、本。

 チョコレート色のブックカバーらしきものがかかった、辞書みたいにがっしりと厚い本。


 ヨウちゃんって、ふだんの休み時間は、リンちゃんたち女子の取り巻きにかこまれているか。誠や大岩たちと、校庭にサッカーをしに行っているか。

 学校で、本を開いたことなんてなかったのに。


「やだぁ~! メガネ男子の中条君も、カッコイイ~」

「ギャップ萌え~」


 リンちゃんも青森さんも、ヨウちゃんの誘惑に負けて、参考書の前から立ちあがっちゃってる。


「ふ~ん。中条って、メガネかけるんだ。あいつって、視力悪かったっけ?」

「ダテでしょ? あたし、ヨウちゃんがメガネかけてるとこなんて、見たことないもん」

「そういえばたしか、あの人、昔、自分は両目視力2.0だって、教室で自慢してたよね」


 あたしと有香ちゃんは、廊下側の真央ちゃんの席をとりかこんで、いつもどおりのまったりタイム。


 それにしても、騒ぐ意味、わかんないなぁ~。


 あたしは、本を読むヨウちゃんなんて、見慣れてるしさ。

 髪の毛、琥珀色なのに、黒縁メガネなんかかけちゃったら、インテリきどってるチャラ男にしか見えない……。


公開用 妖精さん4 メガネ男子黒_2






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