《2》 妖精のお医者さん 4 - ナイショの妖精さん1
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《2》 妖精のお医者さん 4

  01, 2018 20:31
20108092801



「おい、行くぞ」


 カウンターから出てきた中条は、鍵についたリングを指先でまわしてた。廊下の階段を、のぼっていくのかと思ったら、おりていく。


「あれ? 地下室まであるの?」


 そういえば、外から見たとき、テラスの下に、崖にへばりついた、もうひとつの部屋があったような……。

 中条について階段をおりきると、つきあたりに木のドアがそびえていた。
 黒々していて、重たそう。人に入られるのをこばんでいるみたい。


「ここ、オレんちのあかずの間」


 鍵穴に鍵をさし込んで、中条がニヤっと笑った。

 とたんに、ぞくぞくと寒気が。


 だって今、中条の口元、ドラキュラみたいにゆがんでた。


 ガチャンと鍵がはずれて、ギイとドアが開いていく。


 そういえば、この人……なんで、あたしを家に呼んだんだろ……?

 リンちゃんたちでさえ、呼びたくないって家に……。


「ほら、入れ」


 背中を押されて、あたし、「ふぎゃっ!」って、とびはねた。


「い、イヤぁっ! 入んないっ!!  あんたの魂胆なんか、わかってんだからっ! あたしが弱みをにぎっちゃったから、中条、口封じのために、あたしをこの中に閉じ込める気なんでしょう!! 」

「はぁ? おまえな。人をどんだけ悪人だと思ってんだよ」


 だって、中は真っ暗。左側の大きな窓は、黒いカーテンで閉めきられてる。


「ったく。ここまで、のこのこついてきて」


 中条が大またで部屋に入っていく。シャッとカーテンを開けた。

 パッと、オレンジ色の光が、とびこんでくる。



 ……うわぁ……。


 あらわれたのは、広いフローリングの一間だった。あたしの部屋が三つも四つも入りそう。その南から西まで、ぜんぶ窓。

 窓の外は、夕日を受ける海を見わたせる。


「スゴイ、絶景……」


 あたしは地元民だから、海なんて見慣れてる。

 だけど、地上から見る海って、防波堤や波消しブロックでくぎられている。180度に広がる水平線なんて、そうそうお目にかかれない。


「おい。窓じゃなくて、こっちだ」


 ふり向いたら、ダークブラウンの木の本だなが、ずんと壁をうめていた。

 窓ののこり、二面の壁がぜんぶたな。天井からゆかまでのつくりつけ。
 ぎっしりとつまった本は、学校の図書室の本よりも古そう。背表紙は英語ばかり。


「閉めきってたわりには、ほこりがつもってないな」


 中条が見あげているたなには、空の密封ビンがならべてあった。下の段には、理科の実験でつかうビーカー。かと思ったら、すりこぎに、厚底なべ。


 う~んと。図書室と、理科室と、調理室がいっしょになっちゃったって感じ?


「ねぇ、この部屋、なに……?」




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