《5》 きざし1 - ナイショの妖精さん3
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《5》 きざし1

  05, 2021 21:41
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「綾~、あけおめ~」


 携帯電話に出ると、元気いっぱいの真央ちゃんの声がした。


「今さ、有香といっしょに、天満宮に初詣行こ~って、話してるんだけど。綾も来ない~? 天満宮だぞ。おまいりすれば、綾も神様に頭よくしてもらえるぞ~っ!! 」


「……ほぇ? なんで、天満宮だと頭がよくなるの?」


 自分の部屋のベッドの上で、クッションを抱えて、あたしポカン。


「う……。綾の場合、そこからか……」


 地元の天満宮は、バスで、ニ十分くらいで着くところ。なんでか、私立中学受験組は、そろって、合格祈願に行くんだよね。

 まぁ、あたしたち三人組は、無難に市立中学に進むから、関係ないんだけどさ。


 ちなみに、ヨウちゃんも誠も、市立中学組。


「真央ちゃん、ごめんね。きょうはあたし、予定入っちゃってて、行けないや。カレシ・・・んちに、新年のあいさつに行かなきゃならないから~」


「カレシ」ってところを強調して言ったのに、「あっそう」って、きき流された。


「ったく。ほぼ毎日、中条んちに押しかけて。あんま、相手の親にめいわくかけんなよ~」


 う……。


 めいわくかな~?


 ヨウちゃんのお母さん、あたしが行くたびに、ニコニコ迎えてくれるんだけど。


「あ、ねぇねぇ、真央ちゃんっ! それでさ! きのう、ヨウちゃんちに大晦日のあいさつに行ったときに、教えてもらったんだけどね。けっきょく、『め』が頭につく言葉って、なんだったと思う?」


「……は? また、しりとりか? め、め……めんたいこ……メトロノーム……あ、メドゥーサ?」



「ブブ~!『目の前にいる』の『め』でした~っ!! 」


 口に出したら、はずかしくなって、クッションに顔をうずめて、ひとりでキャーキャーもだえちゃう。


「ああ、はいはい。なんか知らないけど、中条にヨロシク~」


 真央ちゃん、プツンと電話を切った。


「も~、真央ちゃんてば、冷たいんだから~。もうちょっと、きいてくれてもいいのにぃ~」


 ひとりでニヤニヤしながら、キッズケータイの電源ボタンに手をのばして。

 セーターから出ている左手首に目が行った。



「……え?」


 黒い。


 そでをまくってみたら、アザが、手首から池みたいに広がっていた。ひじのあたりまで、ぜんぶ黒く染まってる。


「な……なにこれ……?」


 ドッドッドッドって、心臓が早打ちをはじめた。


 書初めの墨でよごしたとか……?


 ううん。書初めなんかしてない。


 パパの読んでた新聞で、腕がよごれた?


 ううん。新聞でこんな真っ黒になるわけない。


 ママの泥パックが腕について……? そんなわけないよっ!


「ヨウちゃんっ!! 」


 あたしはケータイをまた、耳に押しあてた。




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