
「綾~、あけおめ~」
携帯電話に出ると、元気いっぱいの真央ちゃんの声がした。
「今さ、有香といっしょに、天満宮に初詣行こ~って、話してるんだけど。綾も来ない~? 天満宮だぞ。おまいりすれば、綾も神様に頭よくしてもらえるぞ~っ!! 」
「……ほぇ? なんで、天満宮だと頭がよくなるの?」
自分の部屋のベッドの上で、クッションを抱えて、あたしポカン。
「う……。綾の場合、そこからか……」
地元の天満宮は、バスで、ニ十分くらいで着くところ。なんでか、私立中学受験組は、そろって、合格祈願に行くんだよね。
まぁ、あたしたち三人組は、無難に市立中学に進むから、関係ないんだけどさ。
ちなみに、ヨウちゃんも誠も、市立中学組。
「真央ちゃん、ごめんね。きょうはあたし、予定入っちゃってて、行けないや。カレシ・・・んちに、新年のあいさつに行かなきゃならないから~」
「カレシ」ってところを強調して言ったのに、「あっそう」って、きき流された。
「ったく。ほぼ毎日、中条んちに押しかけて。あんま、相手の親にめいわくかけんなよ~」
う……。
めいわくかな~?
ヨウちゃんのお母さん、あたしが行くたびに、ニコニコ迎えてくれるんだけど。
「あ、ねぇねぇ、真央ちゃんっ! それでさ! きのう、ヨウちゃんちに大晦日のあいさつに行ったときに、教えてもらったんだけどね。けっきょく、『め』が頭につく言葉って、なんだったと思う?」
「……は? また、しりとりか? め、め……めんたいこ……メトロノーム……あ、メドゥーサ?」
「ブブ~!『目の前にいる』の『め』でした~っ!! 」
口に出したら、はずかしくなって、クッションに顔をうずめて、ひとりでキャーキャーもだえちゃう。
「ああ、はいはい。なんか知らないけど、中条にヨロシク~」
真央ちゃん、プツンと電話を切った。
「も~、真央ちゃんてば、冷たいんだから~。もうちょっと、きいてくれてもいいのにぃ~」
ひとりでニヤニヤしながら、キッズケータイの電源ボタンに手をのばして。
セーターから出ている左手首に目が行った。
「……え?」
黒い。
そでをまくってみたら、アザが、手首から池みたいに広がっていた。ひじのあたりまで、ぜんぶ黒く染まってる。
「な……なにこれ……?」
ドッドッドッドって、心臓が早打ちをはじめた。
書初めの墨でよごしたとか……?
ううん。書初めなんかしてない。
パパの読んでた新聞で、腕がよごれた?
ううん。新聞でこんな真っ黒になるわけない。
ママの泥パックが腕について……? そんなわけないよっ!
「ヨウちゃんっ!! 」
あたしはケータイをまた、耳に押しあてた。
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