《4》 永遠の子どもの国からの脱出12 - ナイショの妖精さん3
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《4》 永遠の子どもの国からの脱出12

  01, 2021 19:42
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「……え?」


「誠はいつも、あたしを助けてくれたよね。あたしがヨウちゃんと気まずくなって、つらくなっちゃったときも。あたしがヨウちゃんと有香ちゃんの仲をうたがって、有香ちゃんといっしょにいれなくなっちゃったときも。誠は、となりでニコニコ笑ってくれてた。それで、あたしはいつも助けられたんだ。

あたしたちはもう、お互いに恋を知っちゃってるから、これ以上は、『友だち』っていう、つごうのいい言葉で、誠をふりまわすようなことはしたくない。でも、お礼は言いたい。

――誠、ありがとう」


「……和泉……」


 誠のマフラーの結び目がほどけて、風になびいた。鼻の頭を赤く染めて。あたしを見つめる、うるんだ丸い瞳。

 その胸元に、あたしは鈴をさしだした。


「はい。誠、メリークリスマス」


 誠が、ぎゅっと目をつむる。

 また、目を開けて。誠は、そろそろと赤い指先をのばして、鈴を手のひらに包み込んだ。


「あ……ありがとう、和泉ぃ……。へへへ。カワイイ小鈴だぁ~」


 大きな口を横に開いて、へらっと笑顔。


 あ……。いつもの誠……。



「誠。綾は、いつでも取っていいからな」


 ……え?


 ふり返ったら、ヨウちゃんもひざに手をついて、バルコニーのゆかから立ちあがっていた。


「ええ~っ!?  なにそれっ!?  ヨウちゃん、そこは『ぜったいにやらない』って言うとこでしょ~っ!? 」

「なんだよ、葉児! やっぱムカつくっ! 和泉は葉児にとって、『取られてもかまわない』程度ってことぉ?」


「んなわけねぇだろ」


 ふいに、大きな右手がのびてきて、あたしの右腕を後ろに引いた。


 ……え?


 あたしの背中、トンっと硬い胸にあたって、とまる。

 見あげたら、頭の上にヨウちゃんのあごがあった。上から誠を見すえる琥珀色の目。


「綾は、オレのものじゃないから、『取るな』とは言えない。けど、オレは、オレが持ってる全部をつかって、綾をおまえに取られないようにする。それでも、『取る』って言うんだったら、やってみろ」




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