
「……え?」
「誠はいつも、あたしを助けてくれたよね。あたしがヨウちゃんと気まずくなって、つらくなっちゃったときも。あたしがヨウちゃんと有香ちゃんの仲をうたがって、有香ちゃんといっしょにいれなくなっちゃったときも。誠は、となりでニコニコ笑ってくれてた。それで、あたしはいつも助けられたんだ。
あたしたちはもう、お互いに恋を知っちゃってるから、これ以上は、『友だち』っていう、つごうのいい言葉で、誠をふりまわすようなことはしたくない。でも、お礼は言いたい。
――誠、ありがとう」
「……和泉……」
誠のマフラーの結び目がほどけて、風になびいた。鼻の頭を赤く染めて。あたしを見つめる、うるんだ丸い瞳。
その胸元に、あたしは鈴をさしだした。
「はい。誠、メリークリスマス」
誠が、ぎゅっと目をつむる。
また、目を開けて。誠は、そろそろと赤い指先をのばして、鈴を手のひらに包み込んだ。
「あ……ありがとう、和泉ぃ……。へへへ。カワイイ小鈴だぁ~」
大きな口を横に開いて、へらっと笑顔。
あ……。いつもの誠……。
「誠。綾は、いつでも取っていいからな」
……え?
ふり返ったら、ヨウちゃんもひざに手をついて、バルコニーのゆかから立ちあがっていた。
「ええ~っ!? なにそれっ!? ヨウちゃん、そこは『ぜったいにやらない』って言うとこでしょ~っ!? 」
「なんだよ、葉児! やっぱムカつくっ! 和泉は葉児にとって、『取られてもかまわない』程度ってことぉ?」
「んなわけねぇだろ」
ふいに、大きな右手がのびてきて、あたしの右腕を後ろに引いた。
……え?
あたしの背中、トンっと硬い胸にあたって、とまる。
見あげたら、頭の上にヨウちゃんのあごがあった。上から誠を見すえる琥珀色の目。
「綾は、オレのものじゃないから、『取るな』とは言えない。けど、オレは、オレが持ってる全部をつかって、綾をおまえに取られないようにする。それでも、『取る』って言うんだったら、やってみろ」
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