
「あ~、ムッカ~っ !!」
ほっぺをふくらまして、誠がじだんだ踏んだ。
「なんだよぉっ! 和泉のバカぁ~っ!! オレのこと、知ったかぶりしちゃってさ~っ! い~よ、もうっ! コレはいらないんだね~っ !!」
誠のジャケットのポケットから出てきたのは、見覚えのある小鈴。
「あっ! あたしの鈴っ!」
のばしたあたしの手から遠ざけて、誠は小鈴をバルコニーの柵の外にさしだした。
「和泉ぃ。オレ、ホントはこの鈴、和泉がだれのために絵づけしたか、知ってる。葉児へのクリスマスプレゼントだったんだろ? でも、あげさせない。オレが今、ここから捨ててやるっ!」
「ま、誠っ! やめて。それじゃ、誠がすごく悪い人みたいだよっ!」
「い~よ。どうせピーターパンにはもどれないなら、フック船長になってやるっ!! 」
「や、やめてっ!! 」
あたしは、パッと前にとびだした。
バルコニーの外に両手をのばして、体を柵からのりだして、鈴をキャッチ。
ホッとした瞬間、体がさらに前のめりになった。
……え?
バルコニーの外側に、頭が、どんどんかたむいていく。
何十メートルも下。街灯の明かりに照らされる、園内のアスファルト。
ええええっ!?
お、お、お、お、落ちる~っ!!
「綾っ!! 」
後ろから、お腹に腕をまわされた。
ぐいっと、体を後ろに引かれて、バルコニーの内側にもどされる。
ド、ド、ド、ド。
打ちつける心臓の音。
あたしはぺたんと、バルコニーに尻もちをついた。
「か、間一髪……」
あたしのお腹に手をまわして、後ろで、ヨウちゃんもへたり込んでる。
「よ、よ、ヨウちゃん。た、助けてくれて、あ、あ、ありがとう……」
「アホか、おまえはっ!! 気をつけろっ!」
「い、い、和泉……ご、ごめん……」
顔をあげると、誠があたしたちの前で、ガタガタと震えていた。
あ……こんな構図、劇でもあった。
あのときは、あたしとヨウちゃんが逆だったけど。
「お、お、お、オレ、こ、こ、こんなつもりじゃなくて……。い、い、い、和泉までお、お、落ちかけるなんて……思ってもなくて……。だ……だって……和泉って、オレといても、いっつも葉児のことばっか、考えてるじゃんか……。だから……くやしくて……。ちょっとぐらい、嫌がらせしてやりたくなったんだよ……」
……誠。
鼻の頭を赤く染めて、小さな子みたいに鼻をすすってる。
「ちがうよ、誠。この鈴は、誠にあげるつもりだったんだよ」
あたしはひざを立てて、ヨウちゃんの腕の中から、立ちあがった。
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