
観覧車の輪が、青いイルミネーションでチカチカ光ってる。
夜空に開く、青い打ちあげ花火みたい。
下に公衆電話が、ポツンと街灯に照らされていた。
「……いないな。すでに、どっかに移動したあとだったか……」
あたりを一周して、ヨウちゃんが帰ってくる。
もう、五時半。日が落ちたら親子づれはいなくなって、園内は、ぺたぺたひっつくカップルオンリーになってる。
観覧車の乗車口に吸い込まれてくカップルたちの背中を、じ~っと見つめてたら。
「――乗るか?」
……え?
横を見たら、ヨウちゃんが見あげてるのは、観覧車。
「高いところから見おろせば、誠をさがしやすいかもな」
「う……うんっ!」
誠、ごめんっ!
今、「誠が見つかんなくて、ラッキー」って思っちゃった。
ゴンドラから見おろす園内は、イルミネーションに照らされていて、明るくて真昼みたい。
くるくるまわるジェットコースターのレール。「よい子のホラー館」の四角い建物。噴水広場。スペイン風の路地。巨大クリスマスツリーに、時計塔。
「見つかったか?」
向かいの席で、ヨウちゃんもあたしと同じ側の窓をのぞきこんでる。
「ううん。ウォーリーをさがせ、やってるみたい~」
ゴンドラの中は静か。天井についたスピーカーから、小さくクリスマスソングがきこえてくるだけ。
地上をはなれて、あたしたちは夜空へのぼっていく。
遊園地のまわりの海が見えてきた。黒い海。湾になったずっと先に、浅山が夜空になだらかな黒いシルエットを描いてる。
ふもとでまたたく細かい光の粒が、あたしたちの住宅街。
視線を感じて顔をあげると、向かいの席で琥珀色の瞳がこっちを見てた。
ちょ、直視……。
窓枠にひじでもたれて。うす暗いゴンドラの中。あたしと目が合っても、ヨウちゃん、目をそらさない。
どうして……?
いつもは、すぐにそらすのに。
あたしだって、目をはなせない。
なんだろ、吸引力。
琥珀色の熱い瞳に、あたしの目、吸い込まれる――。
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