《4》 永遠の子どもの国からの脱出6 - ナイショの妖精さん3
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《4》 永遠の子どもの国からの脱出6

  21, 2021 21:15
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 観覧車の輪が、青いイルミネーションでチカチカ光ってる。

 夜空に開く、青い打ちあげ花火みたい。


 下に公衆電話が、ポツンと街灯に照らされていた。


「……いないな。すでに、どっかに移動したあとだったか……」


 あたりを一周して、ヨウちゃんが帰ってくる。

 もう、五時半。日が落ちたら親子づれはいなくなって、園内は、ぺたぺたひっつくカップルオンリーになってる。

 観覧車の乗車口に吸い込まれてくカップルたちの背中を、じ~っと見つめてたら。


「――乗るか?」


 ……え?


 横を見たら、ヨウちゃんが見あげてるのは、観覧車。


「高いところから見おろせば、誠をさがしやすいかもな」


「う……うんっ!」


 誠、ごめんっ!

 今、「誠が見つかんなくて、ラッキー」って思っちゃった。




 ゴンドラから見おろす園内は、イルミネーションに照らされていて、明るくて真昼みたい。

 くるくるまわるジェットコースターのレール。「よい子のホラー館」の四角い建物。噴水広場。スペイン風の路地。巨大クリスマスツリーに、時計塔。


「見つかったか?」


 向かいの席で、ヨウちゃんもあたしと同じ側の窓をのぞきこんでる。


「ううん。ウォーリーをさがせ、やってるみたい~」


 ゴンドラの中は静か。天井についたスピーカーから、小さくクリスマスソングがきこえてくるだけ。

 地上をはなれて、あたしたちは夜空へのぼっていく。


 遊園地のまわりの海が見えてきた。黒い海。湾になったずっと先に、浅山が夜空になだらかな黒いシルエットを描いてる。

 ふもとでまたたく細かい光の粒が、あたしたちの住宅街。


 視線を感じて顔をあげると、向かいの席で琥珀色の瞳がこっちを見てた。


 ちょ、直視……。


 窓枠にひじでもたれて。うす暗いゴンドラの中。あたしと目が合っても、ヨウちゃん、目をそらさない。


 どうして……?


 いつもは、すぐにそらすのに。



 あたしだって、目をはなせない。

 なんだろ、吸引力。

 琥珀色の熱い瞳に、あたしの目、吸い込まれる――。





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