《4》 永遠の子どもの国からの脱出4 - ナイショの妖精さん3
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《4》 永遠の子どもの国からの脱出4

  17, 2021 22:08
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 パタパタ走って、噴水を一周。

 でぶっちょのおじさんのお腹に、ぶつかりそうになったけど、黄緑色のダウンジャケットを着てる男子なんて、どこにもいない。



「そ、そ~だ! 公衆電話っ!」


 誠がかけてきたのは、園内の公衆電話のどこかなんだから、そこに行けば、見つけられるはずなんだ!


「な~んだ、かんたん!」


 パンフレットをひろげて、園内マップを確認。公衆電話のマークは、園内の三ヶ所。


「ここから一番近いのは……あっ! ジェットコースターの横っ!! 」


 ポンチョをひらめかせて、走り出した。


 噴水広場の奥。青空に、ぐるんと一回転しているジェットコースターのレール。

 そのレールを走るジェットコースターのカート。レールのてっぺんをさかだちして通過したとき、きゃ~って、さけび声があがった。


 いいな~。あたしも乗りたいな~。


「あった。公衆電話っ!」


 二台の銀色の電話が、トイレの横にならんでた。

 つかってる人は、だれもいない。今時みんな、スマホ持ちだもんね。


「誠~?」


 公衆電話のまわりをあちこちキョロキョロ。

 右はメリーゴーランド、左を見たら、巨大迷路。柵の中のレースコースを、ゴーカートに乗った子どもが、ジグザグ走行してる。


「いない……。来るのが遅すぎたんだ」


 でも、一時間おきに電話くれるって言ってた。

 ってことは、一時間おきに、誠は、かならず園内どこかの、公衆電話に行く。


「最初から、公衆電話のある場所のそばに隠れてれば、誠を見つけられるってことじゃない!」


 公衆電話は三ヶ所にあるから、誠が来る確立は、三分の一。


「よ~し! 次は、西ゾーンの公衆電話で待ちぶせしよ~」



 あれ? ちょっと、楽しくなってきた!


 あたしは、クリスマスソングの流れる園内をかけていった。







 カァカァ、カラスが鳴いている。

 空をあおげば、すっかり夕方。オレンジ色の太陽が群青色の海にうつりこむ。


 あ~……絶景。


 ベイランドの柵の外は、港。

 海に並行して、ベンチが等間隔にならんでいて。アンティークな街灯が、ベンチに緑のあかりを落としてる。

 カップルたちは、クリスマスの夕日の前で、自撮りしてるし。


 なによっ! リア充のバカっ!!  見せびらかしちゃってさっ!


 あたしは、ベイランドの柵の内側。檻に入れられたサルみたい。

 誠を見つけなきゃ、ベイランドから出られない……。


「誠ぉ、ホントにどこにいるの~っ!? 」


 誠はきっちり、一時間おきに、電話をくれる。

 だからあたしも、公衆電話にはり込みしたり。アホっ子なりに頭を働かせて、警察官ぽく行動したのに。

 電話の声だけをのこして、誠はこの世から消えちゃったみたい。



 頭の上の街灯が、チカチカしてからともった。

 ふり返ったら、園内がイルミネーションに包まれてた。

 メリーゴーランドを彩る赤や黄色。観覧車できらめく青い星のマーク。

 まるで、デコレーションケーキの中にいるみたい。


「キレ~」


 正面に、四角い建物が見えた。高々とかかげられた絵看板。腕を前にたらしたゾンビに、ドラキュラに、フランケンシュタインの絵。

 血がしたたるような字で、「よい子のホラー館」って書かれてる。


 あ……ヨウちゃんが、ビビッてヘタレた場所……。


「……ヨウちゃん、どうしてるかな……?」


 つぶやいた自分の声で、胸をきゅ~っとしめつけられた。


「夕方だけはあけといて」って言われたのに……。



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