《2》 妖精のお医者さん 1 - ナイショの妖精さん1
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《2》 妖精のお医者さん 1

  28, 2018 20:43
20108092801





 ……なっとくいかない。

 ぜんっぜん、なっとくいかない。


 校外学習の次の日。放課後の図書室で。

 あたしは、『浅山の歴史』って題名の本を開いて、「浅山砲弾倉庫」って書かれた項目を、にらみつけてる。

 本で顔が隠れちゃうくらい、じっと見ているけど、読んでるわけじゃない。
 あたしの頭は、病気の妖精と、逃げてきた中条のことで、もんもん。

 ほかの三班の子たちは、白紙の模造紙を前にして、中条の意見をきいている。

 模造紙にシャープペンでうすく線を引きながら、「ここから先は説明で」「ここは写真の位置」って指示を出してる中条。


 なによ! しらっと冷めた目しちゃって。


「りょ~かい! さっすが中条君、まとめるのもうまいんだ~。じゃ、わたしは地図描くね。こら、誠! 発表する紙なんだから、落書きしないっ!」


 はりきりまくりのリンちゃん。


「おい。和泉は、写真の下の説明担当だ」


 上から手がのびてきて、パッと、本を取りあげられた。

 顔をあげたら、あたしを見くだしている琥珀色の目。


「だから、今、説明書くために、本読んでるのっ! 返してよっ!! 」


 あたしの声からトゲが出た。


 リンちゃんが、「え?」っていう目であたしを見る。

 そうかもしれない。

 あたしみたいな、アホっ子が、天下の中条に言い返すなんて、はたから見たら想定外なのかもしれない。


 でもあたし、中条なんかもう、ぜんっぜん怖くない!

 こんなヤツ、ただのビビリのヘタレじゃんっ !!



 池みたいに広い模造紙を、マジックのきたない字と写真とヘンな地図でうめつくして。図書室を出たときには、太陽がオレンジ色にかわってた。


「じゃあね~、中条くぅ~ん 」


 ツインテールをゆらして、るんるん帰っていくリンちゃん。


「ばいばいき~ん」


 誠もかかとをつぶした運動ぐつで、ペタペタ道をまがっていく。

 人も車も通らない住宅街。低くつらなる一戸建ての屋根の向こうに、浅山のなだらかな山並みがのぞいている。

 反対側の住宅街が消えて、堤防にかわった。

 堤防の向こうは、色紙を空の下に貼りつけたみたいに、青一色。
 きょうは空が澄んでいるから、海の色も濃く見える。


「……おい」


 あたしの前を行く黒いTシャツが、ヌリカベみたいに立ちはだかった。


「おまえの家は、逆方向だろ? なんでオレについてくんだよっ!」


 中条の言うとおり。

 あたしの家は、学校の向こう側。ドラッグストアとか携帯ショップが建ちならぶ大通りから、道を一本入ったところ。

 中条の家は、この道をずっと歩いた高台にある。

 まわりにも何軒か家があるんだけど。ママからきいた話だと、急な坂をのぼっていかなきゃならない場所だから、引っ越してきても、生活がきつくなって、出て行っちゃう人も多いんだとか。

 それでなのかは知らないけど、うちの学年で、家がこっちにあるのは、中条だけ。


「……あのままでいいの?」


 あたしは口をとがらせて、相手をにらみ返した。


「なにが?」


「あの妖精のおねえさん、病気だった。あの年下の子、助けてほしくて、中条に近づいてきたみたいだった!」





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