
「……え……? え~? そ、それは……」
う~。やっぱり、ほっぺた熱い~。
地元の遊園地ベイランドに行って、観覧車に乗って。夜の港でプレゼント交換……なんて、リンちゃんへのあてつけみたいだから、ちょっとできないよね。
「ヨウちゃんの予定をきいてみなきゃ。もう、何か予定入ってるかもしれないし~」
また、チラッとヨウちゃんのほうを見たら、大岩と話し出してた。
なに話してるんだろ? ヨウちゃんって、女子たちにかこまれてクールなふりしているときより、男子たちといるときのほうがよくしゃべる。
あ……笑った……。お腹抱えて、ケラケラ。
「和泉ぃ」
目の前にひょっこり、クリクリ目があらわれたから、あたし、「わぁっ!」ってとびのいた。
「ま、誠っ!? どうしたのっ!? 」
誠ってば、つくえのわきにしゃがみこんで、頭だけのぞかせてる。
そうだ。あたし……誠にも、ちゃんと言わなくちゃ。
「誠……あの……」
「和泉ぃ。クリスマス、ひまぁ? いっしょにベイランドに行こ~」
「ええっ!? 」
視線を感じて、顔をあげたら、ロッカーに背中でもたれて、ヨウちゃんがあたしを見ていた。
となりで大岩たちはまだゲラゲラ笑ってるんだけど。ヨウちゃんひとり、石膏になっちゃったみたいに、動かない。
「あのさ、誠。おまえもかわいそうだとは思うけど。さっきの話、きこえてたろ? 少しは自重しろよ」
真央ちゃんは眉をひそめたけど、誠は、きょとん。
「え? なにが~? だって、せっかくのクリスマスじゃん。しかも、冬休みで学校休みでしょ! 遊ばなきゃ、もったいないよ~?」
にぱにぱ笑う明るい顔を見ながら、「おかしいな」って気づいた。
誠って、すごく勘がいいんだよね。あたしとヨウちゃんが両想いだってことも、とっくの昔に気づいてた。
その誠が、クラスの全員を巻き込んだ騒動に、気づいてないわけないんだよ。
「……いいよ。誠。クリスマスに遊びに行こ」
あたし、ほっぺたに笑みをつくった。
「……え?」
真央ちゃんがかたまる。有香ちゃんもかたまる。
ヨウちゃんの視線が、こっちに向いているのも知っている。
「やった~っ!! ラッキーっ! じゃあ、和泉、朝の十時ね。ベイランド正面口の入場門の前で。遅れないでよ~っ?」
両手をぶんぶんふりながら、誠が席にもどっていく。
と、思ったら、真央ちゃんがど~んって丸い体をのりだして、あたしにのしかかってきた。
「あ、綾っ!? なに約束しちゃってんだよっ? せっかくのクリスマスだぞっ! しかも、男子とふたりでって、さっそく浮気かっ!? 」
「ち、ちがうって。あたし……今回のこと、誠にまだ、ちゃんと話してないから。一度しっかり、誠と向き合いたいの」
「でも……なにも、クリスマスじゃなくても……」
有香ちゃんもため息をついてる。
それより、痛いのはヨウちゃんの視線……。
次のページに進む
前のページへ戻る
コミカライズ版もあります!!

【漫画シーモア】綾ちゃんはナイショの妖精さん

【漫画kindle】綾ちゃんはナイショの妖精さん

にほんブログ村

児童文学ランキング
スポンサーサイト