《3》 伝えたいこと7 - ナイショの妖精さん3
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《3》 伝えたいこと7

  04, 2021 21:30
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「……え……? え~? そ、それは……」


 う~。やっぱり、ほっぺた熱い~。


 地元の遊園地ベイランドに行って、観覧車に乗って。夜の港でプレゼント交換……なんて、リンちゃんへのあてつけみたいだから、ちょっとできないよね。


「ヨウちゃんの予定をきいてみなきゃ。もう、何か予定入ってるかもしれないし~」


 また、チラッとヨウちゃんのほうを見たら、大岩と話し出してた。

 なに話してるんだろ? ヨウちゃんって、女子たちにかこまれてクールなふりしているときより、男子たちといるときのほうがよくしゃべる。


 あ……笑った……。お腹抱えて、ケラケラ。



「和泉ぃ」


 目の前にひょっこり、クリクリ目があらわれたから、あたし、「わぁっ!」ってとびのいた。


「ま、誠っ!?  どうしたのっ!? 」


 誠ってば、つくえのわきにしゃがみこんで、頭だけのぞかせてる。



 そうだ。あたし……誠にも、ちゃんと言わなくちゃ。


「誠……あの……」


「和泉ぃ。クリスマス、ひまぁ? いっしょにベイランドに行こ~」


「ええっ!? 」


 視線を感じて、顔をあげたら、ロッカーに背中でもたれて、ヨウちゃんがあたしを見ていた。

 となりで大岩たちはまだゲラゲラ笑ってるんだけど。ヨウちゃんひとり、石膏になっちゃったみたいに、動かない。

「あのさ、誠。おまえもかわいそうだとは思うけど。さっきの話、きこえてたろ? 少しは自重しろよ」


 真央ちゃんは眉をひそめたけど、誠は、きょとん。


「え? なにが~? だって、せっかくのクリスマスじゃん。しかも、冬休みで学校休みでしょ! 遊ばなきゃ、もったいないよ~?」


 にぱにぱ笑う明るい顔を見ながら、「おかしいな」って気づいた。

 誠って、すごく勘がいいんだよね。あたしとヨウちゃんが両想いだってことも、とっくの昔に気づいてた。

 その誠が、クラスの全員を巻き込んだ騒動に、気づいてないわけないんだよ。


「……いいよ。誠。クリスマスに遊びに行こ」


 あたし、ほっぺたに笑みをつくった。


「……え?」


 真央ちゃんがかたまる。有香ちゃんもかたまる。

 ヨウちゃんの視線が、こっちに向いているのも知っている。


「やった~っ!!  ラッキーっ! じゃあ、和泉、朝の十時ね。ベイランド正面口の入場門の前で。遅れないでよ~っ?」


 両手をぶんぶんふりながら、誠が席にもどっていく。

 と、思ったら、真央ちゃんがど~んって丸い体をのりだして、あたしにのしかかってきた。


「あ、綾っ!?  なに約束しちゃってんだよっ? せっかくのクリスマスだぞっ! しかも、男子とふたりでって、さっそく浮気かっ!? 」


「ち、ちがうって。あたし……今回のこと、誠にまだ、ちゃんと話してないから。一度しっかり、誠と向き合いたいの」


「でも……なにも、クリスマスじゃなくても……」


 有香ちゃんもため息をついてる。



 それより、痛いのはヨウちゃんの視線……。




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