《3》 伝えたいこと6 - ナイショの妖精さん3
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《3》 伝えたいこと6

  01, 2021 21:49
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「えええ~っ!! 」


 ひびきわたる真央ちゃんと有香ちゃんの大合唱。

 耳、キーン。これ、リンちゃんたちの騒音のレベル、一気に超えちゃったよっ!


 クラス中が静まり返って、あたしたちを見てるのに。真央ちゃんも有香ちゃんももう、人の目なんておかまいなしで、あたしに食らいついてくる。


「ど、ど、ど、どういうことだよっ! 綾っ!!  それならそうと、学校に来てすぐに、うちらに話せよっ!! 」


「だ……だって、なんとなく……はずかしいし……」


「あ、綾ちゃんっ! じゃあ、中条から言われたんだねっ!?  その、だから……決定打をっ!」


 ザワッと、教室に波が走った。



「……なに? 葉児、やっと告ったの?」


 ヨウちゃんのとなりで、大岩がぼそり。

 そしたら、ヨウちゃん、ジーンズの後ろポケットに手をつっこんだまま、しらっと。


「……まぁな」


 なにあの、冷静さっ! きのうの産まれたての小鹿ちゃんはどこにっ!?


 だけどそのせいで、クラスは大騒ぎになった。


「すげぇ、葉児、さすがだ~っ!」

「って、コレ、うちのクラスでカップル誕生第一号っ!? 」

「ちがうちがう。第一号は、窪のほうで……」

「おまえ、言うなよっ!」


 バンって、音がしたから、みんなハッと静まり返った。


 イスを倒して、席から立ちあがったのは、リンちゃん。


 リンちゃんが大またで歩き出す。ツインテールをゆらして、ヨウちゃんの前を素通りして、廊下にとびだして。


「リンっ!」


 青森さんが追って行く。

「やっぱり、リンにはキツイよね……」

「わたしたちはさ。おおかた予想がついた時点で、あきらめもついたけど」

「もともと、中条君は、観賞用みたいなとこもあったし」

「でも……リンは本気だったから……」


 女子たちの声が、耳に痛い。

 有香ちゃんから「夢をたまに受け入れてもらえたとき、すごくうれしくて。それでつづけていっちゃう」って話をきいたとき、「恋とおんなじだ」って思ったけど。


 どんなにがんばったって、最終的に受け入れてもらえない場合もある……。


 って、言うか……「夢」も「恋」もそれがあたりまえなんだよね。


 ロッカーの前に目を泳がせたら、ヨウちゃんは、リンちゃんが出て行った廊下を見つめてた。


 ヨウちゃん……リンちゃんのこと、追いかけたい……?


「……あたし……いいのかな……? 人をさしおいて、自分だけいい目見ちゃっても……。あたしなんて、ヨウちゃんがどこを好きになってくれたのかも、さっぱりわかんない、ただのアホっ子なのに……」


「綾ちゃん」


 ポンッと肩に、有香ちゃんの手がのっかった。


「人を好きになるってさ、自分の夢を発見するのとおんなじくらい、むずかしいことだよね。それなのに、自分の好きな人が、自分を好きになってくれる確率なんて。もう、宇宙の中から地球を見つけだすくらい、ナイに等しいことじゃない。

これって、奇跡だよ。だから、胸をはりな。綾ちゃんは、才能と同じくらい価値のあるものを、もう、手に入れてるんだから」


「……有香ちゃん……」


「そうだぞ、綾。覚えてるか? うちらが片想いしてる相手。校長先生に、年下の女の子。どんなにがんばったって、どうにもならない相手なの。だけど、綾はどうにかなった。うちらのぶんもさ、めいっぱいリア充しろよ」


「……真央ちゃん」


 右と左にふたりの手をとって、ぎゅっとにぎりあう。


「ありがとう、ふたりとも」



「まずは、目の前のクリスマスだな。綾、どうする? 中条とどこに行く?」




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