
「えええ~っ!! 」
ひびきわたる真央ちゃんと有香ちゃんの大合唱。
耳、キーン。これ、リンちゃんたちの騒音のレベル、一気に超えちゃったよっ!
クラス中が静まり返って、あたしたちを見てるのに。真央ちゃんも有香ちゃんももう、人の目なんておかまいなしで、あたしに食らいついてくる。
「ど、ど、ど、どういうことだよっ! 綾っ!! それならそうと、学校に来てすぐに、うちらに話せよっ!! 」
「だ……だって、なんとなく……はずかしいし……」
「あ、綾ちゃんっ! じゃあ、中条から言われたんだねっ!? その、だから……決定打をっ!」
ザワッと、教室に波が走った。
「……なに? 葉児、やっと告ったの?」
ヨウちゃんのとなりで、大岩がぼそり。
そしたら、ヨウちゃん、ジーンズの後ろポケットに手をつっこんだまま、しらっと。
「……まぁな」
なにあの、冷静さっ! きのうの産まれたての小鹿ちゃんはどこにっ!?
だけどそのせいで、クラスは大騒ぎになった。
「すげぇ、葉児、さすがだ~っ!」
「って、コレ、うちのクラスでカップル誕生第一号っ!? 」
「ちがうちがう。第一号は、窪のほうで……」
「おまえ、言うなよっ!」
バンって、音がしたから、みんなハッと静まり返った。
イスを倒して、席から立ちあがったのは、リンちゃん。
リンちゃんが大またで歩き出す。ツインテールをゆらして、ヨウちゃんの前を素通りして、廊下にとびだして。
「リンっ!」
青森さんが追って行く。
「やっぱり、リンにはキツイよね……」
「わたしたちはさ。おおかた予想がついた時点で、あきらめもついたけど」
「もともと、中条君は、観賞用みたいなとこもあったし」
「でも……リンは本気だったから……」
女子たちの声が、耳に痛い。
有香ちゃんから「夢をたまに受け入れてもらえたとき、すごくうれしくて。それでつづけていっちゃう」って話をきいたとき、「恋とおんなじだ」って思ったけど。
どんなにがんばったって、最終的に受け入れてもらえない場合もある……。
って、言うか……「夢」も「恋」もそれがあたりまえなんだよね。
ロッカーの前に目を泳がせたら、ヨウちゃんは、リンちゃんが出て行った廊下を見つめてた。
ヨウちゃん……リンちゃんのこと、追いかけたい……?
「……あたし……いいのかな……? 人をさしおいて、自分だけいい目見ちゃっても……。あたしなんて、ヨウちゃんがどこを好きになってくれたのかも、さっぱりわかんない、ただのアホっ子なのに……」
「綾ちゃん」
ポンッと肩に、有香ちゃんの手がのっかった。
「人を好きになるってさ、自分の夢を発見するのとおんなじくらい、むずかしいことだよね。それなのに、自分の好きな人が、自分を好きになってくれる確率なんて。もう、宇宙の中から地球を見つけだすくらい、ナイに等しいことじゃない。
これって、奇跡だよ。だから、胸をはりな。綾ちゃんは、才能と同じくらい価値のあるものを、もう、手に入れてるんだから」
「……有香ちゃん……」
「そうだぞ、綾。覚えてるか? うちらが片想いしてる相手。校長先生に、年下の女の子。どんなにがんばったって、どうにもならない相手なの。だけど、綾はどうにかなった。うちらのぶんもさ、めいっぱいリア充しろよ」
「……真央ちゃん」
右と左にふたりの手をとって、ぎゅっとにぎりあう。
「ありがとう、ふたりとも」
「まずは、目の前のクリスマスだな。綾、どうする? 中条とどこに行く?」
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